本稿では、海外進出を検討している日本企業の方に向けて、海外進出の進め方やポイントについてご紹介します。
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海外進出のメリット
目的1:市場開拓・海外顧客の新規獲得
少子高齢化により、日本の人口は減少。それに伴い、国内の需要は次第に減って行き、近年のコロナ禍を除いて海外を新たな販売先として選ぶ企業が増えています。また、コロナ禍においても、海外進出には依然として高い注目が集まっています。
目的2:生産コスト・人件費の削減
生産の拠点を海外に移すことで、部品や商品の製造にかける生産コストや、人件費を削減できるようになります。近年までは、中国が世界の工場として躍進していましたが、人件費の高騰により、新たに生産の拠点を移す「チャイナプラスワン」と呼ばれる考え方が普及し、東南アジア方面へ拠点を展開する企業の割合が多くなりました。
目的3:ブランド価値の向上
ブランディング戦略を駆使して、海外での拠点もより強固なものにすることで「世界で売れている人気商品」というイメージが定着します。同じような商品であっても差別化をはかることができ、オンライン販売などでも積極的に PRできるようになります。
目的4:新たなビジョンの創生
日本で発売を開始した商品がなぜ人気になったのか、あるいは日本で全く売れない理由は何か。同じ商品サービスであっても、異国の文化や生活習慣などの多角的な視点から見つめ直すことで、全く異なる事業や新たなアイディアが生まれる可能性があります。国内の販売戦略だけでは得ることができなかったノウハウを国内事業においても生かすことができます。
海外進出を検討するにあたり、社内に経験者がいない場合や十分なリソースがないというのは大きな課題です。その課題を解決する方法の1つとして、社外の代行サービスに依頼する方法があります。今回は海外進出に向けて活用できる代行サービスを目的別にご紹[…]
海外進出の目的を明確化する
近年増加傾向にある海外進出、その目的は企業によって様々です。日本国外の新しい市場の開拓と販路拡大、人件費をはじめとする生産コストの削減、部品や商品の調達、新規事業を海外で立ち上げるなど、ひとことに海外進出と言っても多様な目的があります。他社が進出しているから、トレンドだからという理由で進出するのではなく、自社にとってどのような目的があり、事業戦略の一部としてどういった位置づけになっているのかを明確にする必要があります。
例えば「なぜ今なのか」「国内市場での売上拡大のための他の方法ではだめなのか」「自社において、海外進出に対応できる人材・資金は十分なのか、十分でないならどういった対策をとるのか」「社内で合意されているのか、十分な説得材料があるのか」「海外進出以外にはどのような選択肢がかんがえられるのか」という問いに対して、明確な回答を持っておくと良いでしょう。
海外進出の準備は万全にする
海外進出には、国内での事業展開よりも多くの時間と労力を費やします。また撤退のリスクや損失の発生なども予想されるため、資金調達や計画等の準備は万全にする必要があります。ここでは海外進出に向けての具体的な手順を説明します。
進出国の検討
それぞれの国のニーズに合わせたサービスや商品を展開するため、まずは自社商品がどのような地域に適合しているかを確認した上で、進出する国や地域を具体的に検討します。各国のニュースだけでなく、周りの地域やや世界で話題になっているトレンドも十分に把握しておく必要があります。
日本企業の海外進出先として特に人気がある国は、インド・インドネシア・タイです。意外と思われるかもしれませんが、東洋経済が行った調査によると、2000年代後半から中国への海外進出の割合は徐々に低下。その代わりにインドネシアやタイなどを含む ASEAN 10カ国とインドの割合が上昇しており、ASEAN 地域においては2012年に中国のシェアを上回っています。特にインドネシアでは日本語学習者が80万人を超えており、日本企業への就職に高い関心を持っていることが伺えます。
必要経費の算出・資金調達
海外進出に向けて必要な経費の算出や、それに応じた資金の調達を行います。企業で用意できる資産の他、資金の頼り先としては、国家や専門機関から発行されている助成金や補助金などがあります。助成金においては、一定の基準をクリアしていれば受け取ることが可能です。一方で補助金の場合は、基準を満たしていても、公募を募るなどして、一定の票を獲得し、審査を通らなければ得ることができません。海外進出支援の機関から得られた支援金を利用して、現地のエージェントと密に連携を取ることができるようになります。日本のエージェントは持ち合わせていない、現地のノウハウなどの価格以上の価値を得られます。
経済産業省 海外進出支援
経済産業省が行っている海外進出支援では、海外向けのローカライズ&プロモーションを行う事業・海外からの資金調達等のためのピッチングを行う事業・with コロナ時代におけるエンタメビジネスを行う事業などの、情報やサービスに特化した支援を積極的に行っています。ですがこちらは公募により得られる補助金が主であり、支援のハードルは非常に高いものとなっています。
厚生労働省 海外進出支援奨励金
厚生労働省の支援では補助金ではなく、助成金として支援を受け取ることが可能です。しかし、受け取りの対象は既に海外進出を果たしている企業かそのグループ会社のみに限られています。
JAPANブランド育成支援等事業 ミラサポ Plus
経済産業省傘下の中小企業庁が行なっている進出支援のサービスです。謝金、旅費、借損料、通訳・翻訳費などの海外進出に必要な資金支援を500万円以下(下限200万円)の範囲で行なってくれます。市場調査の支援のほか、現地に詳しい専門家を招いたり、新商品の開発費用も一部サポートしています。
新輸出大国コンソーシアム
JETRO(日本貿易振興機構)が2016年から提供を開始した、中小企業向けの海外進出支援サービスです。2021年までに9256社の企業を、EPA 活用の観点等から積極的にサポートしています。EPA は日本と外国が締結している経済連携協定のことで、条約を結んでいる国同士での取引は一定の税率軽減などが適用され、より少ない経費で物品の輸送などを行うことが可能になります。取扱分野としては工業品や農業品などの産業に関連するものが多いです。
外貨規制の確認
近年需要が急増している東南アジアでは、特に外資規制が厳しく設けられており、事業を開始しようと思った矢先に政府に中止を命じられたり、賠償金を求められたりするケースが多発しています。進出国が決定したら、人材の育成や具体的なスケジュールを練る前に、まず自社のサービスや商品が外貨規制に該当しないか、大まかで構いませんので確認するようにしてください。
自社の人員の育成
海外進出においては、重点を置くべきリソースが国内と比べて大きく変わってきますので、現地の制度や情報などを正確に把握しておく必要があります。そのためにはまず、国内で自社の人員をしっかりと育成した上で、海外進出を検討するようにしてください。一方で、海外進出を果たしている企業は日本国内でも僅かであり、海外進出に特化した人材に磨きをかけることは非常に難しいです。そのような場合は、海外進出の人材育成に特化した支援サービスの利用をおすすめします。
- 公益財団法人日本生産性本部 – コンサルティング・人材育成支援(海外進出企業支援)
- JETRO(日本貿易振興機構) – 中小企業海外ビジネス人材育成塾
- リクルートマネジメントソリューションズ – グローバル人材育成
海外進出スケジュールの策定
海外進出には、莫大な資金や有効なブランディング戦略、連携企業の確保など、企業にとって大きな力が必要ですので、中期から長期での戦略を練るようにしてください。失敗した際の損失は、日本市場で展開した時よりもはるかに大きく、撤退にも、それ相応の労力がかかってしまうため、短期での進出は推奨できません。
日本国内でできる情報収集
海外進出に向けて、国内であらかじめ把握する情報は以下の通りです。
進出国の経済指標とリスク
進出国の経済指標を分析することで、今後の伸びしろを把握できます。ですが、税金や補助金などの制度に関わる変更などは、経済指標だけでは把握することができません。それらの変更も利益に関わってくることですので、注視する必要があります。また、進出国の外交スタンスや政治体制、周辺地域の治安なども調べる必要があります。
税制に関すること
進出国の税制に関しては、インターネットでも十分に調査が可能ですが、自力ですべての制度を把握することは難しく、国によっても大きく異なってきますので、海外投資アドバイザー等の専門家への相談がおすすめです。
現地視察・状況確認
現地の視察や、状況確認において最も重要なのは、現地の市場やサービスについて精通した、強力なアドバイザーを探し出すことです。大手企業のユニクロは、2001年にロンドンへの進出を果たしましたが、その後は現地の市場や感覚などをつかむことができずらあえなく撤退しています。ですが、再進出時には現地のファッショントレンドや情報を熟知したアドバイザーと緊密に連携することに重きを置くようになってからは、大成功を収めています。
交通インフラの様子や、設備の動作確認のほか、海外進出で携わる人材がどの程度の情報を持ち合わせているのか、部品の調達や設備の維持管理で携わるサービスの品質は信頼できるものか、よく確認しておく必要があります。
失敗要因の把握と対策
海外においては、日本市場よりもレッドオーシャン化している熾烈な市場も多数存在します。また、現地の風習や生活習慣も日本とは全く異なるため、日本国内で別の顧客層を狙って事業を展開する時よりも、ハードルが大幅に上がり、失敗するリスクも高くなります。そこで海外進出においては、失敗が予想される原因やそれに対する対策を満遍なく練っておくことが重要です。
日本国内の市場縮小が見込まれていることから、先進国・新興国含む海外進出トレンドが続いています。自社の国内での売り上げが伸び悩んでいたり、取引先企業や競合企業が海外進出に踏み切ったりするのを見て、海外進出を検討されている企業の方も多いのではな[…]
海外進出の手法と進め方
ここからは、海外進出の手法や進め方を分野別に説明します。
製造業の場合
製造業においては、東南アジア方面への海外進出が期待できます。高い日本の技術力を広めることができる上、人件費は安く、新興国の急成長のニーズに合っています。
製造業などの第1次産業・第2次産業の海外進出の場合は、主に3つの手法があります。
難易度低 輸出業者や商社を通じて販売する
海外進出において最もリスクが低く、簡単な方法です。
リターンや現場の生の声はなかなか得られません。
難易度中 現地の販売代理店と取引する
現地の情勢を熟知した販売店との取引を行えば、中程度のリターンを受け取ることができるうえ、現場の生の声や市場情勢などを代理店を通じて知ることができます。
難易度高 現地法人を設立する
海外進出の中で、最もハードルが高い方法です。
現地法人を設立したが、外貨規制や販売不調などのトラブルが起き、撤退を余儀なくされた場合の損失はこの中では最も大きくなります。
準備を入念に行ったうえで検討する必要があります。
サービス業の場合
サービス業の場合は、以下の2つを特に重視する必要があります。
人材育成
特に語学力やヒューマンスキルなどを意識し、進出先の国においても、日本と同レベルのサービスを提供しなければなりません。
ホテルを想像して頂ければ分かりやすいかと思います。
仮に日本と同レベルのサービスでおもてなしをしたい時は、進出先の従業員にも同じように教育する必要があります。
ですが、語学力の不足により、要望を満足に伝えることができなかったり、従業員のパフォーマンスを思うようにあげることができなかったりと、トラブル続きで撤退を余儀なくされる企業は非常に多いです。
そういった場合に対処するため、人材スーパーバイザーなどのヒューマンスキルに特化した専門家を招くといった方法がありますが、数が圧倒的に不足しているため、十分なサポートがなかなか受けられないのが現状です。
利益を創出するシステムの構築
人材育成で対応できない場合、あるいはコンテンツ産業などの業種では、自動的に利益を創出するシステムを構築することによって、継続的なリターンを受けることが可能になります。
例えばホテルを例にとると、フロントスタッフを配置せずに、無心チェックインのサービスを導入してIT化を進める、あるいは、清掃ロボットを導入して人件費を削減するなどの工夫が求められます。
越境EC(電子商取引)
越境 EC (電子商取引)は、海外で直接物品の販売を行う直接取引となります。
この方法は、すでに海外進出を果たしている企業や、販売する商品が電子製品などの小型で軽量なものである場合に限られます。
海外進出に関する知見や、現地でのノウハウを状況に応じて駆使することが求められますが、口コミ評価や現地での直接のやり取りを通して、現場の生の声や商品の評判をダイレクトで得ることができます。
BeeCruiseの海外進出支援サービス
BeeCruiseが展開する海外の進出支援サービスでは、豊富な実績とノウハウをもとに、的確なサポートを受けることができます。
サービスの展開国は約120カ国、越境 EC の支援サイト数は5700以上にのぼり、50社以上の海外企業への出資を行っています。
海外発送代行サービス 「転送コム」海外購入サポートサービス「Buyee」など、越境 EC において、「低コスト」「高品質」で受けられる支援が魅力です。
海外進出成功の秘訣
ハードルが高いといわれる海外進出を無事に成功させるためにはどのようなことに力を入れていけばよいでしょうか。
自社の強みを全面に打ち出す
海外進出した場合、「日本企業であること」が大きな強みとなります。
この他にも、以下のような強みを前面に打ち出し、顧客の心を掴んで離さないことが重要です。
・色や素材などのバリエーションの豊富さ
・進出先の国では得ることができない品質の高さ
・オリジナル性の高いサービス
・自社しか保有していない技術
など
現地の従業員の心を掴む
海外進出において、特に重要なのは、現地で連携を取る従業員の心をつかむことです。
現地の人にとっては、私たち企業は所詮は海外企業という扱いで受け取られることも少なくないため、「一度進出してきても、すぐに撤退してしまうのではないか?」「日本企業特有の長時間労働に課せられるのではないか?」といった不安を持って求職を行う従業員も数多くいます。
そのような不安を払拭するために、どのような目的で・どのようなビジョンを描いて・どのようなバックアップ体制を準備してきたのかを、現地の人に受け入れやすい形で説明することで、より自社とマッチした、優秀な人材の確保が期待できます。
顧客のニーズを把握する
海外進出では、今までは絶対にヒットするだろうと思っていた商品も、現地では全く受け入れられない、あるいは日頃から意識することのなかったなんの変哲もない商品が、爆発的にヒットするというような、予想外の出来事が起きやすいです。
そのようなハプニングを重ねて成長していくというビジョンも素敵ではありますが、やはりある程度、現地の顧客のニーズを把握してからでないと、リスクは大きくなりますし、事業そのものが失敗に終わる可能性も高いです。
特に、顧客のニーズが予想できない場合は、いきなり現地法人を開設するのではなく、一旦現地の販売代理店を通じて、自社商品を売り込み、現地の顧客の口コミなどの評判を聞いた上で再検討した方が望ましいです。
まとめ
海外進出は具体的な目標設定と事前の十分な調査と検証が重要です。国内での事業とは異なるリスクに関しての情報収集と対処方法を検討しておくことで、海外進出に際してのリスクを減らすことができます。自社の資金力やマーケティング戦略、社内人材の有無を考慮した上で最適な進出形態を選び、海外進出を成功へ導きましょう。
BeeCruiseでは、海外進出を支援する事業を行っております。海外への商品・サービス展開をご検討される際にはぜひBeeCruiseにお問い合わせください。