【企業の海外進出】ビジネス上の課題、進め方とポイントを解説

海外進出の必要性とビジネスチャンス

海外進出の必要性

国立人口問題研究所の調査によると、2065年に日本の人口は8,800万人まで減少し、そのうち38.4%にあたる3,380万人が高齢者になると予測されています。人口減少と少子高齢化に伴い、日本国内市場は今後縮小が予想されており、また日本の若い世代の消費傾向として車など高価なものを購入せず、必要最低限のもので満足する傾向にあると言われています。人口動態の急激な変化を期待するのは難しく、今後の日本国内消費力の落ち込みは避けられない状況です。このような日本の状況が見込まれている中、海外市場を狙って進出することでビジネスの拡大を図る企業が増えてきています。

海外進出によるビジネスチャンス

海外進出によって得られるビジネスチャンスの一つに、市場の拡大が挙げられます。海外に目を向けると、特に新興国を中心に人口が増え続けており、また経済発展に伴う消費力の向上が見込まれています。

経済発展については、東南アジアの賃金上昇率が日本と比較して非常に高い伸び率を示していることから、購買力・消費力が高まっていることが分かります。例えばベトナムは日本との最低賃金格差が50倍以上ありましたが、ここ10年で20倍まで減少しており、2022年には10倍程度まで縮まると予測されています。ネパールは2017年時点で10倍程度、中国・フィリピンは3.5倍程度の日本との最低賃金格差になっており、今後アジア地域において、様々な商品・サービスの購買と消費が伸びていくことは確実だと言えます。

数年前まで新興国地域への進出は、安い賃金と労働者人口の多さからコスト削減のための生産拠点として進出した日本企業が多く見られましたが、今後はこういった新興国地域の購買力の高まりを見込んだ「販路拡大」を目的に進出するという選択肢も十分に考えることができます。

海外進出で直面する5つの課題と解決策

現地の情報不足

日本は島国で、日本語という固有の言語を使用していることから、海外の市場や消費者とは距離があり、現地の状況や情報が得にくいという課題があります。そのため、事前にターゲットとする市場についての情報収集が必要です。国や国際機関による統計情報などから定量的なデータを、現地の人々の意識や思考から定性的なデータを収集することができます。これらの収集データに基づき、自社ビジネスの海外進出戦略を練ることができます。

言語や文化の違いによるコミュニケーション

ビジネスはあくまで人間対人間のやりとりであり、言語や文化の違いによるコミュニケーションは大きな課題となります。国によっては英語を話さない国も多く、その場合は日本語と現地語を流暢に話せる人材を確保する必要があります。

言語の問題以外に、国によって文化背景が異なり、生活習慣や商品・サービスに期待するものが日本と全く違うことを前提としてビジネスを進める必要があります。日本で日常的に食べられているものが現地でも食べられているとは限りませんし、日本人が求めるような高品質な商品・サービスにこだわらない人もいます。日本国内の本来の使われ方とは違った用途で商品を使うこともあるようです。その国の人々が持つ文化や宗教的な事情によって、働き方、服装、食事、など様々な点で日本とは異なり、ビジネスの場にも大いに影響してくることが考えられます。それを「日本式に合わせないのが悪い」と考えるのではなく、現地でビジネスをする限りは現地の習慣や文化を学び知ろうとする姿勢、現地の顧客や自社で雇用する人たちと気持ちよくコミュニケーションを取れる環境づくりが大切になってきます。

販路や現地ネットワーク

初めて進出する海外において、自社商品・サービスの認知度は現地ではゼロの状態から始めることになります。現地パートナーや販売代理店、卸先なども持っていない状態からのスタートのため、特に現地にネットワークを持った会社との協業やパートナーを見つけることは重要です。現地法人を立ち上げる前に、出張ベースで担当社員を派遣してパートナー探しや営業活動を行ったり、現地への進出支援会社を利用するなどして、ネットワークを前もって構築していくことが大切です。

政治・地理的リスク

海外の国々の中には、政治事情が不安定でデモや暴動が起きたり、政権交代などにより外資系企業に対する制度や法律面、税制面での急な変更が起きたりする可能性が否定できません。また、地理的な観点から自然災害に見舞われやすい国があり、そのような自然災害のよく起こる地域であっても、日本国内のような十分な災害対策がなされていない国や地域もあります。地震や津波、洪水、火山の噴火など天災が起こった際には、甚大な被害を被る可能性もあります。国によっては、周辺国との関係が唐突に悪化し、商品の輸送やサプライチェーンにおいて影響がでる、最悪な場合には戦争に発展することも考えられます。こういったリスクに対しては、進出先の候補を選ぶ際に対象国で過去におきた政治・地理的な面でのリスクを調査するのに加え、進出検討中や進出後には世界情勢や周辺国の動き、現地の法律・税務情報を常にチェックし、いつでも迅速に対応できるような社内体制を構築しておく必要があります。また、政治・地理的リスクが起こった際の対処法や、最悪の場合撤退の判断をする基準も社内で決めておくと、万が一のときに迅速な意思決定ができます。

為替レートの変動

異なる通貨で取引をする海外ビジネスにおいて、為替レートの変動が自社の売上と利益に影響します。現地通貨の価値の下落により、同じ商品を販売しても日本円換算すると利益が出ない、また最悪の場合赤字になる可能性があります。ただし、為替レートについては、契約時点におけるレートで銀行を通じて為替予約をすることで、為替変動のリスクを回避することができます。

海外進出の検討プロセスと進め方

1. 海外進出の目標設定

海外市場を狙い海外進出をすすめる企業が多い中、漠然と海外進出を進めるのではなく、明確な目標を持ち、スケジュールを立てることが海外進出の成功には重要です。「いつまでに」「いくらの売上を目指すのか」「いくらの利益を目指すのか」といった具体的な目標を経営者自らが掲げ、社内の一部の担当者だけでなく会社全体の戦略として人材・資金ともに注入していく準備が大切です。3年後、5年後の長期的な視点と、仮説検証を繰り返し事業の方向性を探っていく短期的な視点、両方の視点から目標を立てます。会社の経営戦略としての長期的視点から取り組むべき事項を考えると共に、海外ビジネスを自社の新規ビジネスとして実行していく中で短期的視点を持ち、PDCAを素早く回してその場その場で細かく事業の転換をしながら海外事業を推進していく、2つの視点が重要です。

具体的には、全社の戦略に基づく海外事業の目標の明確化(目標売上高、収益額、スケジュール)と、全社での海外事業に対する環境整備の具体化(必要な人材・資金・社内体制の具体化)をはじめに行います。

2. 進出有望国の選定

第2のプロセスとして、人口や地理的特徴・国の制度や法律・経済状況といったマクロ環境と、対象とする業界の市場規模や成長性、そして「いつまでに」「どの規模のビジネスをするか」という自社目標の3点から、進出有望国を検討します。

マクロ環境は、例えばASEANの国々のなかでも各国で異なり、ひとことにASEAN市場を狙うといっても最初に取り組むべき国は自社の戦略や市場に合わせて選定していく必要があります。具体的には、まず進出候補国のリストアップを行った後、マクロの基礎情報・規制情報を調査し、整理と検討を行います。

対象とする業界の市場規模や成長性については、各国での業界構造が異なるため、自社の戦略や競合との競争に大きく影響します。例えばサプライチェーンの構造が日本と異なったり、国によって外資規制のある業界が異なるので、業界全体および調達ルート・販売ルートを含め各国の情報を細かく調査し、自社の位置づけを明らかにして戦略を検討します。具体的には、事業環境や事業構造、業界の成長性、業界の事業特性について調査し、有望な進出国を選定します。

3. 進出先でのビジネスモデル検証

次に、2で検討した進出有望国でのビジネス展開にあたり、有効なビジネスモデルの仮説を立て検証します。まず、有望国の市場性や競合の調査、消費者や市場のプレーヤーへのインタビュー調査を行い、外部環境を把握します。それらをもとに、自社の強みが最大限に生きる事業仮説を立て、検討を行います。

具体的には、まず市場規模、成長性・将来性といった市場調査を行い、次に競合調査として競争環境と現地の競合を把握します。その後、自社が持つ経営資源を整理し、海外進出にあたり強みとなるポイントとその活用方法について仮説を立てます。具体的には、「ターゲット顧客が抱えている問題は、自社が持つこの経営資源によって解決できる」という仮説を立てます。経営資源には、自社製品だけでなく、自社がもつ人材・技術・設備・情報・流通チャネル・ブランドも含まれます。最後に、実際に現地の政府、消費者、見込みのある取引先、同業者などへインタビューを行い、ビジネスモデルの実現可能性を検証します。

また、検証したビジネスモデルは自社のみで実現できるのか、現地パートナーと提携しながら進めていく必要があるのかを明確にするためにも、自社の強みを認識しておくことが重要です。自社商品の価格・性能・ブランド力・顧客満足度といった表面的な強みに加え、生産能力や生産・開発までにかかる時間、問題解決能力、改善・実行力といった自社組織の持つ本質的な強みを整理しておきましょう。

4. 現地パートナーを探す

販路拡大を目的とした海外進出なのであれば、現地市場についての知識と経験があり、現地にネットワークを持っている現地パートナーを探すことが重要です。具体的には、現地パートナー候補をリストアップし、その後自社の目的に合う企業への絞り込みを行います。その上で、絞り込んだ企業へ連絡をとります。

現地パートナー探しに重要なのは、現地パートナーに求める機能と、自社が現地パートナーに提供できる価値、2つの明確化です。現地パートナーに求める機能を明確にすることで、自社の目的に沿った候補先に絞り込むことができます。リストの絞り込みを行った時点で、パートナー候補の現地市場でのポジショニングを把握し、連絡をとる際の優先順位付けを行います。また、現地パートナーに提供できる自社の価値を明確にし、現地パートナーにとってwin-winの関係を築けるという魅力をアピールする必要があります。自社のブランド力や技術力、現地にはないサービスなど、自社の価値によりパートナーの事業も一緒に成長していくという具体的なイメージを描いてもらえるよう、候補企業へアプローチします。他国の企業や日本の他の企業からもアプローチを受けているであろうことを想像し、自社が選ばれるようにコミュニケーションをとっていく必要があります。

現地パートナー候補の選定には、客観的な評価も重要です。特に財務的な信用と、業界での評判を事前に調査しておくと、後からのトラブルを防ぐことができます。財務情報は、信用調査機関などから入手可能な場合と、外部からは入手困難な場合がありますが、入手可能な場合は前もって調査し、困難な場合にはある程度やりとりをした後で、直接依頼して財務情報を入手する方法もあります。また、現地の業界内の人に聞き込みをし、当該業界内での評判も事前にチェックしておくといいでしょう。海外とのビジネスにおいては、パートナーの財務情報が正確でない場合や、技術を盗まれるリスク、現金回収の懸念などがあるため、パートナー候補についての外部には公になりにくい評判を知ることは、そういったリスクの事前の低減に繋がります。

また、現地パートナーとの面談時には、表面的な挨拶に行くのではなく、初回から事前にしっかり準備した上でその場で相手の要望を見極め、自社の目的を明確に伝え、相手のメリットも説明しながら交渉に臨みます。日本的な表敬訪問のような、商談でない訪問に時間を割くことは嫌われる傾向があり、すばやい意思決定をその場で下せるように決裁者も同行することが望ましいでしょう。

5. 事業立ち上げ

現地パートナー企業の目処がついたら、事業の立ち上げに移ります。進出形態には、パートナー企業の買収、合弁会社の設立、業務提携や資本提携、自社での現地法人設立など最適な進出形態を選んで実行に移します。特に海外事業は、国内事業と同様の事業であっても、未開拓の市場であるという点で新規事業の性質が強く、海外において新規事業の推進経験のある人材が海外ビジネスの成功には必須です。

まとめ

海外進出にあたってのビジネス上の課題、進め方とポイントを解説しました。長期的・短期的な視野をもって目標を立て、念入りな調査検証と準備を行い、ステップを踏んで進めていくことが海外進出成功の鍵と言えます。

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