越境ECと関税、国別の事情を詳しく解説

越境ECでは関税が発生するという点が、国内取引との大きな違いです。関税は国ごとに異なるため、取引する国の法律などをあらかじめしっかり頭に入れておきましょう。

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関税とは

関税とは、海外から商品を輸入する際に課される税金のことをいいます。もし、海外からの安価な輸入品が大量に流入した場合、国産品が売れなくなる可能性があります。そのため、国内産業を保護するために、海外からの輸入品には「国境関税」が課されます。


越境ECと関税について国別の注意点をわかりやすく解説

関税制度とは

関税には、各国の国内法に基づく「国内関税率」と、WTO加盟国が代表する条約に基づく「協定関税率」の2種類があります。

税率の形態には、下記の4種類があります。

  • 商品の価格に比例して課される「従価税」
  • 商品の数、重さ、容積に応じて課される「従量税」
  • 従価税と従量税を組み合わせた「混合税」、
  • 「特別関税」

関税の目的

関税には、当該国の財政収入を得ること、国内産業を保護することの 2つの目的があります。

しかし最近は、財政収入よりも国内産業の保護を重視して関税を課す傾向があります。 関税を課すことで、輸入品が国産品に比べて安くなりすぎるのを防ぎます。それにより国産品が輸入品との競争力を高めることができるようになります。 極端に安価な商品が国内に流通するのを防ぐことで、国内産業を保護するというわけです。

国別の関税情報

関税は自国を守るためのものですが、二国間や地域間で政治的な動きなどによる関税の変動が起こる場合もあります。法律や条約に基づき関税が決められていますが、国の状況により変化するため、自社製品や対象国ごとの関税率については、その都度確認する必要があります。

この記事では、下記の国についての関税制度を説明します。

  • 中国
  • アメリカ
  • 東南アジア(シンガポール、インドネシア、マレーシア)

中国

世界最大の購買力を誇る中国の関税制度は、主に価格に比例した従価税を採用しています。日本からの輸入には、最恵国税率が適用されます。日本の消費税である付加価値税と関税を混同して間違えている場合が多いため、注意が必要です。

中国で越境ECを行う際にかかる関税には、主に「郵便税」と「越境EC総合税」の2種類があります。 中国の関税制度は、「最恵国税率」「暫定税率」「協定税率」「特恵税率」「普通税率」の5種類に分類されます。 内容は以下の通りです。

  • 最恵国税率 :世界貿易機関(WTO)加盟国または中国と相互関税協定を結んでいる国からの輸入品に適用される関税率。
  • 暫定税率 ::最恵国税率が適用される国・地域からの輸入品に対して設定される暫定税率。 燃料油などの第749税の輸入に適用される税率。
  • 協定税率 :中国と特定の国・地域との間の貿易および特恵関税協定に基づく関税率
  • 特恵税率 :中国との間で関税特恵協定を締結している国・地域に適用される、最恵国税率よりも有利な特例措置です。 主に開発途上国を対象としています。
  • 普通税率 :上記「最恵国税率」「中間税率」「協定税率」「特恵税率」に該当しない国・地域に適用される税率

郵便税

郵便税は、個人使用のために送られたパッケージに課される税金です。 EMSなどの国際宅配便を利用して日本から中国の消費者に直送する場合、輸入時に送料がかかります。 禁止されていないすべての品目は、次の税率に分類されます。

  • 13%:パソコンやデジカメなどのIT機器、食品、飲料、家具、おもちゃ、ゲーム、薬、本や新聞など
  • 20%:スポーツ用品(ゴルフ用品を除く)、釣り用品、衣料品、テレビカメラ等の電化製品、自転車等
  • 50%:タバコ、アルコール、宝飾品、ゴルフ用品、高級時計、高級化粧品など

越境EC総合税

越境EC総合税は、企業が中国の保税倉庫を利用して商品を発送する際に課される税金です。 郵便税に比べて税率は低いですが、利用条件は厳しくなっています。 ポジティブリスト(例外として認められるもののみのリスト)に掲載されているため、主な対象製品は限定されています。税率は以下となります。

  • 9.1%:食品、化粧品、電化製品、衣類、おもちゃなど
  • 17.9%:ワイン・スパークリングワイン、ジュエリー、ゴルフボールなど
  • 23.1%:香水、高級化粧品等

上限は、1回の注文につき5,000元以下、年間26,000元以下に設定されています。 上限内であれば、関税0%、輸入増値税率と消費税率を適用した課税額の70%が越境EC総合税として課税されます。

アメリカ

アメリカでは従価税、特定税、混合税が品目ごとに定められており、「HSコード」という国際コードによって明確に分類されています。税率は、輸入量と輸入価格に基づいて設定されます。日本からの輸入には一般税率が適用されます。

アメリカの貿易相手国のほとんどは、最恵国待遇と同等の通常の貿易関係(NTR)として扱われます。NTR国から米国に輸出する場合も同じ関税率が適用されます。

アメリカの関税制度は、「一般税率」「特別税率」「法定税率」の3種類に分類されます。

  • 一般税率:NTR対象国の税率。日本も一般税率に分類される。
  • 特別税率:FTA等を締結している国に対して優遇措置が適用される税率。日米貿易協定の対象品目には特別関税率が適用される。
  • 法定税率:キューバ、北朝鮮、ロシア、ベラルーシの4カ国に対して適用される税率。一時、適用国はキューバと北朝鮮の2カ国のみであったが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、2022年4月以降にロシアとベラルーシが新たに加えられた。

品目によって、従価税、特定税、および両者を組み合わせた複合税が関税の種類として規定されており、輸入量と輸入価格(FOB価格)に基づいて税率が設定されます。輸入価格が米ドル以外の外貨建ての場合、価格は四半期ごとに発表される公式為替レートを使用して決定されます。

米国の関税率の確認方法

米国の関税率を調べるために、米国国際貿易委員会のサイトには、製品をカテゴリ別に分類するHTSコードがあります。HTSコードは、以下のサイトで確認できます。

HTSコード一覧
https://hts.usitc.gov/current

HTSコードを確認後、以下のサイトで関税率を検索できます。

USITC(米国関税表)
https://dataweb.usitc.gov/tariff/database

東南アジア

東南アジアの関税制度は国ごとに異なりますが、ASEAN域内の貿易には特恵関税が適用されます。 ASEANは、ASEAN域内の物品貿易協定を締結しているほか、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア・ニュージーランドとも自由貿易協定を締結しています。

シンガポール

シンガポールの関税は、一般関税と特恵関税の2種類に分類されます。 一般関税とは、国が定める輸出入品に対して課される税金です。 また特恵関税とは、二国間や国と対象地域の間など、複数の国の間で輸出入する際に税率を相互に引き下げることを指します。

シンガポールとFTA(自由貿易協定)を結んでいる国には特恵関税が適用されますが、ビールなどの酒類を除き、一般関税は原則として非課税となります。また、シンガポールには消費税として「商品税」があります。 輸入品にも税金がかかるので、関税はほとんどかかりませんが、商品税があるという点に注意が必要です。

インドネシア

インドネシアの関税制度は、「一般関税率」「ASEAN共通効果特恵関税(CEPT)税率」「自由貿易協定(FTA)の適用税率」「一般特恵関税制度(GSP)税率」「世界的貿易特恵関税制度(GSTP)税率」に分類されます。

日本とインドネシアの場合、JIEPA(日インドネシア経済連携協定)とAJCEP(日ASEAN包括的経済連携協定)が締結されているので、この2つの協定を利用して関税を減免することができます。

特に、JIEPAの特別使用税免除制度(USDFS)を利用することで、自動車、電気・電子機器、重機・建設機械、エネルギーなどの特定の用途の物品の関税が免除されます。

マレーシア

マレーシアの関税体系は、「一般税率」と「FTA・EPA(経済連携協定)適用税率」から成り立っています。 ほとんどのアイテムは、取引額に基づいて従価税の対象となり、税率は 0% から 60% の範囲になります。 一部の商品は商品の数量に基づき、特定の税金の対象になります。

日本とマレーシアの場合、JMEPA(日マレーシア経済連携協定)とAJCEP(日ASEAN包括的経済連携協定)が締結されているので、この2つの協定を利用することで関税を減免することができます。

越境ECで日本の消費税が非課税に

日本の消費税は、越境ECでは非課税になります。輸出免税を受ける方法と、消費税を払った場合に還付を受ける方法を紹介します。

輸出税の免税について

消費税は、日本国内で商品やサービスの販売などの取引に対して課される税金です。 販売が輸出取引の場合、消費税は免除されます。 これを輸出免税といいます。

非課税の輸出取引の例は、以下の通りとなります。

  • 日本から海外への物品の輸出取引
  • 外国貨物等の振替
  • 国際輸入、国際通信、国際郵便
  • 外国貨物の輸送・保管
  • 外国人、外国法人等の非居住者に対する特許権、工業所有権、著作権等の譲渡又は貸与
  • 非居住者へのサービスの提供(日本国内での飲食、宿泊など直接受けるサービスは課税対象)
  • 外国人観光客が利用する日本の免税店

上記の免税を受けるためには、その取引が輸出取引であることを証明する必要があります。 また輸出取引の種類に応じて、輸出許可は7年間保持しなければなりません。

消費税還付について

越境ECでは消費税を支払う必要はありませんが、消費税を納付済みの場合、税務署を通じて販売した商品の購入および発送にかかる消費税の還付を受けることができます。ただし、消費税の還付を受けるためには、一定の条件を満たした上で必要書類を揃える必要があります。

消費税の課税事業者とは

消費税の納税義務がある事業者のことを指します。消費税がかかるのは、年間の課税売上高が1,000万円を超える事業についてです。 消費税非課税事業者や、年間課税売上高が1,000万円以下の場合、還付不可となります。

消費税の計算方法は「原則課税方式」

原則課税方式は、売上に含まれる消費税から費用に含まれる消費税を差し引いた金額を徴収する方法です。 消費税の計算方法は2通りあり、簡易課税方式による消費税の還付はできませんのでご注意ください。

消費税還付明細書

還付の申請をする場合は、申請書類を管轄税務署の管区長に提出してください。 申請の時期は、法人は課税期間終了日の翌日から2カ月以内、個人事業主は課税期間の翌年の3月末日までとなっています。

必要書類は、課税期間に対応する確定申告書、仕入税額控除額明細書、課税売上比率計算書、仕入税控除額等の計算書、輸出許可書です。

Shopeeの越境ECがスタート

Shopee(ショッピー)は 2015年にシンガポールで設立され、現在は東南アジアと台湾で急速に成長している越境ECプラットフォームです。現在はシンガポール、マレーシア、タイ、台湾、インドネシア、ベトナム、フィリピン、ブラジル、メキシコを含む計14地域でそれぞれのマーケットプレイスが展開されています。

Shopeeは、日本語のほか、英語・中国語にも対応しています。また、配送対応や幅広い媒体での広告運用が可能なことが長所として挙げられます。

初期費用なし、かつ出店継続に固定費がかからないため、個人でも気軽に出店可能です。サポート体制が充実していて、初心者でも安心して越境ECを始められるShopeeを利用してみるのもおすすめです。

越境ECを行う際の関税について

越境ECでは、対象国の商習慣や決済方法、商品代金以外のコストの見せ方など、対象国の主流や動向を事前に把握しておく必要があります。具体的にどのようなことをすべきかについて説明します。

取り扱う商品の関税に注意

商品の販売価格を設定する際、商品が属するカテゴリーごとの関税を理解することが必須となります。各国共通の「HSコード」を理解し、対象国の関税率を確認してから販売を開始してください。

関税率を調べるには、海外配送大手のFedExが有料で提供している関税率情報データベース「WorldTariff」の簡易検索が便利です。

販売サイトに関税を明確に記載する

確認した商品ごとの関税率は、販売サイト上で購入者に対し分かりやすく表示することで、返品や受け取り拒否といったトラブルを減らすことができます。関税を含めた販売価格を明示し、売主が関税を負担するかなどについてはっきりさせておくことが重要になります。

付加価値税(VAT)にも注意

越境EC事業では、関税だけでなく付加価値税(VAT)にも細心の注意を払う必要があります。付加価値税とは、日本の消費税に似た意味を持つ税金で、商品やサービスを購入する際に追加で支払う税金のことを指します。

特にEU諸国では付加価値税の導入が義務付けられており、現地で商品を販売する際には最低15%の税率が加算されるため、注意が必要です。税率には上限がないため、国によって税率が異なります。越境ECを始めるにあたっては、支払うべき関税に加えて、この付加価値税を理解しておくことが重要です。

まとめ

越境ECを始める際は、関税について学ぶ必要があります。自社の商品に何が適用されるかを調査して販売価格を決定するだけでなく、その国の商慣習に沿った徴収方法をサイト上で購入者に明示することが重要です。

また、関税に関連する条約や関連協定を行っている国の状況、対象国との貿易摩擦などのニュースについても、日々チェックしておきましょう。

越境ECを検討している方は、初期費用・維持費がかからないShopeeがおすすめです。

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