アパレルブランドの海外進出の現状は?進出方法や成功のコツを解説

国内では縮小傾向にあるアパレル市場も、特に新興国では人口増加や経済成長に伴い成長途中の分野だと言えます。アパレルブランドの海外進出は、売上拡大のための有効な戦略の1つです。海外進出のための方法や成功のポイントを説明します。

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日本のアパレルブランドの海外進出の現状

日本のアパレルブランドの中で海外進出に成功した企業は、グローバルSPAのファーストリテイリング(ユニクロ)や良品計画、デザイナーズブランドのComme des Garcons(コム・デ・ギャルソン)、Yoji Yamamoto、Kenzo、Issei Miyake、Junya Watanabe、Michiko Koshino、レザーブランドのPORTER(ポーター)、シューズブランドのOnitsuka Tiger(オニツカタイガー)、シャツブランドのメーカーズシャツ鎌倉(鎌倉シャツ)、ジーンズブランドのジャパンブルー(桃太郎ジーンズ)などが挙げられます。

しかし、自動車産業など他の分野と比較した場合、アパレル分野は海外進出の規模やスピードにおいて遅れを取っている状況です。2022年の世界の繊維糸・織物の輸出額ランキングでは、世界1位が中国、2位インド、3位トルコで、日本は12位となっています。なお台湾は8位、韓国は10位で、近隣国と比べても日本は低いランクにあるのが現状です。

【参考】グローバルノート:世界の繊維糸・織物 輸出額 国別ランキング・推移

アフターコロナや円安によるインバウンドの増加に伴い、日本のアパレルブランドが外国人の目に触れる機会がより多くなっており、海外展開の拡大も期待されています。国としてもアパレル事業に対して、中小企業関連支援策やクールジャパン戦略の活用、ジェトロと連携するなど、海外展開の取り組みを推進しています。

また個性的な日本のデザイナーズブランドやストリートブランドは、世界市場で今後さらに成長する可能性があると言われています。多様化する消費者ニーズをニッチなブランド商品により満たすことができ、世界に響く理念・デザインを表現できる中小ブランドにとってはチャンスが多い環境と言えるでしょう。

世界のアパレル産業の現状と今後

世界的に見ると、アパレル産業は成長産業に属しています。市場調査会社のMordor Intelligenceによると、アパレル市場規模は2024年から2029年でCAGR(年平均成長率)4.63%で拡大すると予測しています。

アパレル市場は、オンラインショッピングの増加により成長が見込まれると分析しています。メーカーは、以前よりもはるかに大規模なプラットフォームで製品を販売できるようになったことが理由として挙げられています。また、1人当たりの所得の増加とブランド製品への嗜好の変化により、高級衣料品の需要が高まるとも予測しています。レディースアパレル部門においては、労働者階級の女性の数の増加に大きく牽引され急速な成長傾向を示しているとのことです。

日本国内では縮小傾向にあるアパレル市場ですが、グローバルな視点では現在も成長の余地があることが分かります。

【参考】Mordor Intelligence:アパレル市場規模と市場規模株式分析 – 成長傾向と成長傾向予測 (2024 ~ 2029 年)

アパレルブランドの海外進出方法

越境EC

越境ECとは、日本にいながらインターネット上でブランド商品を販売し、海外の顧客へ直接発送する方法です。地理的な制約を受けない販売チャネルであり、現地への人材の派遣や事務所の設立、店舗展開などが不要で、投資額を抑えることができるのがメリットです。1つの地域に限らず、世界中の広い市場を対象に販売することが可能になります。

越境ECの展開プロセスは、「事業環境調査」「ECサイト立ち上げ」「プロモーション」「決済」「配送」の5つのステップで行います。

ステップ1:事業環境調査

各国の生活や経済などの環境を調べ、どの国の消費者に向けて販売するのか検討します。その国で多く利用されるモールへの出店は可能なのか、自社サイトで販売する場合はどの言語に対応するかなどについて検討します。

ステップ2.ECサイト立ち上げ

自社商品をどこで販売するのかについて決定します。下記の3つのパターンが考えられます。

  • 自社でECサイトを立ち上げる
  • 対象国のモールや海外向け商品を販売するモールに出店する
  • 現地パートナー企業やアパレルサイトに卸し、販売は現地企業が行う

ステップ3.プロモーション

対象の国や地域、ターゲット層に合わせてプロモーション方法や施策を検討します。ステップ2で決定した販売方法に合ったマーケティングやプロモーション方法を選択します。

ステップ4.決済

決済環境を整備します。決済後、顧客が物品の輸入に対する関税や現地の消費税を支払う必要が発生する場合があります。事前に税制について調べ、サイト上に関税見込み額を明記するなどの対策を取り、安心でスムーズな取引を行いましょう。

ステップ5.配送

発送方法は、大きく分けて下記3つの方法が考えられます。

  • 自社から海外の購入者へ直接発送する
  • 日本の海外発送サービス会社と提携し、注文ごとに自社からサービス会社へ発送、その後サービス会社から海外の購入者に発送する
  • 現地に物流拠点を持ち、現地拠点から購入者に発送する

輸出・卸売

販売を現地企業に任せる方法として、貿易を通じての卸売と代理店取引が挙げられます。現地のアパレル小売事業者や、現地のアパレル商社に対して卸売する形態のほか、現地の販売店や代理店と契約し販売を委託するという形態もあります。

この方法のメリットとして、現地業者と直接交渉することにより現地市場での価格や流行などのタイムリーな状況把握が可能になることが挙げられます。それにより社内で貿易に関するノウハウが蓄積され、比較的スムーズに人材育成を行うことができます。また現地企業が持つ既存ネットワークを生かすことで、自社で直接販路開拓を行うよりも速いスピードで事業を展開することが期待できます。

デメリットとしては、価格や販売方法が現地事業者任せになり、品質や価格の管理、マーケティングのコントロールが困難になる点が考えられます。信頼できる現地事業者を探すことにも、多くの時間と手間が費やされるでしょう。

直営店

現地店舗で自社ブランドを販売する方法として、直営店の設置があります。マーケティング施策の実施から販売まで、全ての工程を自社の裁量で行うことができます。また、現地市場の一次情報が把握しやすいというメリットもあります。現地企業への卸売や代理店契約ではコントロールが難しい、ブランドが持つ価値観や理念を直接顧客へ説明し、理解や共感を得られるということも期待できます。

デメリットは、自社に海外進出に関してのノウハウがない場合、現地での事業所設立や直営店のオープン、英語や現地語のできる人材の確保、現地でのビザ申請や現地従業員の採用など、全ての業務を自社で行う必要があることです。トラブルが発生した場合は、自社で解決する必要があります。なお現地でのコネクションがない場合には、ゼロからネットワークを築いていかなければいけません。

▼アパレル・ファッション業界で越境ECを検討されている方はこちら
越境ECの始め方 海外ポテンシャルが高いファッション業界編

アパレルの海外進出における課題

ターゲット地域の選定

海外でのターゲット顧客を決めるのは、日本国内でのターゲット顧客の選定より困難です。しかしマーケティング戦略が「誰に」「どんな価値を」「どのように提供するか」を定めることである以上、ターゲット顧客を明確にすることは最初に重要なステップとなります。

ターゲットとする地域や顧客によって、使用する言語はもちろん、法律や税制や政治経済リスク、地理的リスクが異なります。そのため、海外進出に必要な社内リソースや準備、マーケティング施策も全く違うものになります。また越境ECの場合は「海外」という広範囲に対する販売が可能ですが、マーケティング施策の実行においては、ターゲットとなる地域と顧客を明確にした施策の方が効果があります。

現在は1つの地域であっても顧客ニーズが多様化してきているため、自社ブランドの製品にとって最もニーズにフィットし、競合優位性を持つことのできるターゲットを選択する必要があります。ターゲットとなる地域を定めるだけでなく、その地域のどんな人をターゲットにするかについても、年齢や性別、ライフスタイル、パーソナリティー、使用場面といった軸で細分化し、検討します。

海外進出先の選定では、人口が多い国やGDPの高い国などで判断されがちです。しかしアパレルブランドという製品柄、自社ブランドが持つストーリーや理念、デザインへのこだわりといった付加価値への感受性が高い地域・消費者なのかどうかについての調査が重要となります。また顧客セグメントの規模は十分か、収益可能性を持っているかなど、当該地域のファッション市場の規模や動向、現地の競合ブランドについても十分に調査し、自社ブランドが競合優位性を持つことのできるターゲット地域・顧客を選択しましょう。

直営店での体験の提供

日本の中小アパレルブランドにとって、海外に直営店を設置し直接販売を手掛けるということはかなりハードルが高いです。そのため現地企業に販売を任せるという方法を取るアパレルブランドが多いのが現状です。しかし、販売を現地のアパレル卸売企業や小売業任せにした場合、マーケティングやブランドイメージのコントロールが難しい上、現地企業に多くの手数料などを支払うことになり、利益率は低下します。

最近では越境ECの普及により、現地に店舗を持っていなくても海外へ手軽に商品を届けることが可能になりました。しかしブランド価値を体験してもらい、情報発信する場としては直営店には敵いません。

長期的に見て、海外進出を成功させ現地でブランドとしての地位を確立するためには、海外小売を他社任せにしないことが一番です。直営店において自社ブランドのストーリーや理念、デザインへのこだわりを伝え、その価値を体験してもらうことでファンを増やすことができ、結果的に売上アップにつながります。

海外進出を成功させるポイント

高付加価値のブランドをつくる

ブランドの背景にある印象的な歴史やストーリー、独自のクリエイティビティやデザイン性、社会が抱える課題を解決するなどといった、高い付加価値を感じさせるブランドをつくることが、日本のアパレル企業が海外進出する上での1つのポイントになります。

現在は世界中でファストファッションをはじめ、ある程度のデザイン性のあるアパレル商品を低価格で手に入れることができます。ファストファッションなどを手掛ける大企業と同価格帯の商品で勝負するというのは、知名度や資金力の面で難しいでしょう。そのため、自社の商品を購入することで顧客が特別な価値を実感できるといった、高付加価値のブランドと商品づくりに注力することが大切です。まずは、そのブランド価値やストーリーを理解してもらうためのマーケティング戦略を計画しましょう。

日本のアパレルの品質の高さは、すでに海外で広く知られています。細部までこだわった縫製やデザインは、高い付加価値として今後さらに世界から評価される可能性を十分に秘めています。

カテゴリーを絞る

アウトドアブランド、スーツブランド、シューズブランドなど、特定の用途やアイテムに特化することで、多種多様な商品を扱うブランドよりも独自性が打ち出しやすく、顧客にとっても「○○といえば、あのブランド」と印象付けることができます。

消費者の好みはどんどん多様化してきており、ニッチなニーズを捉えて世界の人々に響く理念とデザインを表現するブランドであれば、海外でも成長できる可能性が大いにあります。

特定のアイテムや用途に絞って成功した日本のアパレルブランドとしては、レザーブランドのPORTER(ポーター)やシューズブランドのOnitsuka Tiger(オニツカタイガー)などが挙げられます。

まとめ

ファストファッションブランドの台頭により安価なアパレル製品が世界中で手に入るようになった現在、海外で評価されるような付加価値を持つアパレルブランドを構築、発信していく必要があります。「着る」「おしゃれ」という価値に加え、ブランドストーリーや独自のデザイン性、社会的課題への取り組みなどを通じて別の付加価値を感じてもらうことが重要です。背景などについて共感してもらえるような、ブランドづくりを行っていきましょう。

日本ブランドの品質の高さや細部へのこだわり、デザイン性は、世界的に高く評価されています。また、環境に配慮したサスティナブルな生活が世界的なトレンドとなっていることからも、長く大切に着ることのできる高品質な商品は、今後さらに好まれる可能性があります。

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