【海外進出のための事業計画】作成するメリットと方法をステップ別で解説

海外進出を検討していても、どのように進めるのか、具体的なイメージや必要資金、スケジュールがわかりにくいという場合が多いのではないでしょうか。海外進出の事業計画を作成することでより具体的な施策まで検討することができ、実施への一歩を踏み出すことができます。今回は海外進出のための事業計画を作成するメリットとその具体的な方法をステップ別にご紹介します。

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海外進出に向けた事業計画とは

はじめに、海外進出に向けて作成するべき事業計画について説明します。

事業計画とは

事業計画とは、事業をどのように運営していくのかという具体的な行動・施策予定を社内外に示す計画のことです。英語でビジネスプランと呼び、自社のビジネスを構成する要素について客観的にわかりやすく伝え、事業内容や企業の戦略、収益見込みを説明します。事業の立ち上げや継続的に必要な資金を調達する際にも必要になります。

海外進出といっても、現地の新しい市場に参入するという意味で「新規事業」と考えられます。そのため国内事業の延長線としてではなく、新しい事業として事業計画をしっかりと立てることで社内での海外進出に対する方向性の認識を一致させるとともに、海外進出に伴う資金の調達にも活用することができます。

事業計画の目的

海外進出を漠然と考えており何から始めれば良いかわからないといった場合に、今後の行動の選択肢や直面しうる課題について十分に検討し、行き当たりばったりでない戦略的な施策を行なうことを目的に作成するのが事業計画です。

海外での新規事業を行うにあたり、自社の立ち位置を確認するとともに、自社の強み、現地の市場環境、考えられるリスクを事前に分析し、勝ちに行ける戦略と計画を検討します。

海外進出にあたり事業計画を策定するメリット

海外進出にあたり、事業計画を策定するメリットは、「思考の整理・可視化」「事業推進の指針」「失敗リスクの軽減」「資金調達に活かせる」の4つが挙げられます。

思考が整理される・可視化される

海外進出についての頭の中にあるイメージを事業計画書に書き出すことで、経営者や担当者の思考を整理・可視化することができます。海外進出の目的、どのような事業を行うのか、自社製品やノウハウをどのように活用しようと考えているのか、海外事業での売上目標や収益目標、今後のスケジュール、といった頭の中で思い描いていたイメージを実際に書き出すことで可視化し、それを元にして客観的に検討することができます。

書き出すことで、他の選択肢とも比較検討したり、実際にかかるコストを予測できたりとメリットは大きいです。社内で議論を進めたり決裁を取ったりする際にも、事業計画書を基にすることでより具体的な検討を進めることができます。

事業推進の指針となる

事業計画を策定するメリットとして、社内での事業推進の指針となることが挙げられます。特に多人数で海外進出に取り組んでいく場合に、可視化した事業計画があると関係者間で事業の今後の方向性について認識を共有することができ、事業計画に沿った意思決定を行うことができます。

失敗のリスクが軽減される

事業計画を策定すると、頭の中のイメージが可視化されより具体的な施策や可能性について検討することになります。その際、リスクについても検討すべき点が明らかになってきます。

特に海外進出の場合には、日本国内のものとは異なる予想外のリスクがあり、政治・経済リスク、採算性、パートナーとのトラブル、労務問題といった海外進出ならではのリスクや課題があるため、事業計画を作成することでそういったリスクに対する対応方法を事前に検討する機会になります。

資金調達がしやすくなる

事業計画書を作成することで資金提供者へのアピールになるというメリットもあります。銀行などの融資機関に対して、自社はどのような事業を、どんな目的で進めるのかが具体的に記された事業計画書を見せることは口頭での説明よりも伝わりやすく説得力があり、短時間で正確に相手が知りたい内容を知らせることができます。

事業計画で目標の売上や収益、推測されるコストが明確になることで、資金面の課題や改善策が明確になります。事業計画で具体的な内容を詳細にわかりやすく伝えられると、資金提供機関内での審査期間の短縮や審査に合格する可能性が高まります。

海外進出の事業計画書を作る前に

事業計画書を作る前に、検討・調査しておくべき事項について説明します。

海外進出の目的の明確化

海外進出したいという気持ちだけが前のめりになってしまい、海外進出すること自体が目的となってしまうと、様々なことに手を出してしまし、行き当たりばったりで非効率な方法で事業を進めることになる可能性があります。

まずは海外進出の目的をはっきりとさせ、その目的にあったアプローチを考える姿勢が大切です。自社の海外進出の目的は「国内市場の飽和による海外市場開拓」「生産コストの削減」など様々です。売上目標、利益目標、それぞれの達成時期をイメージできると良いでしょう。

また、海外進出への取組について、社内の状況についても一度整理します。経営者の判断はどうなのか、社内で合意は取れているのか、人材や資金は十分かといった現在の状況を把握します。

進出先についての事前調査

事業計画書作成時に十分な情報を比較しながら進出国を決められるよう、進出先候補について国内で把握できる情報を調査します。進出国の情報として、人口動態や経済成長率、輸入制度や関税、外資規制、労務情報といった情報を事前に把握することで、情報収集不足による失敗やトラブルを未然に防ぐことができます。

また、国の情報だけでなく、進出先の市場情報や見込み顧客情報についても調査するのが望ましいです。自社の製品やサービスを購入する意思や能力のある顧客を把握します。具体的には市場規模や市場の成長性とともに、顧客ニーズ、顧客の購買決定プロセス、購買決定者といった観点で分析します。

仮戦略の立案・仮説構築

進出先に関する事前調査を基に仮戦略の立案や仮説の構築を行い、今後の海外展開の流れを計画します。具体的な売上目標やアクションプラン、人材や資金調達方法の策定を暫定的に定め、事業計画書の作成に移ります。

海外進出の事業計画書を作成する

実際に海外進出に向けた事業計画書を作成する際のステップをご紹介します。

売上目標の設定

はじめに、事前に定めた海外進出の目的と目標について明確に言語化し、それぞれについて数値と時期を定めます。海外進出のきっかけは、新規市場の開拓、生産コスト削減、調達拠点の設置、新規事業の立ち上げなど様々ですが、自社全体の事業戦略の中で海外進出に取り組む意義をはっきりさせることが重要です。

海外進出の目的を明確にするには、「なぜ、いま進出する必要があるのか」「国内への投資ではいけないのか」「社内体制は十分か(人材・資金繰り)、十分でない場合どのように対策するのか」「社内で合意が得られるか」「海外進出以外にどのような選択肢が考えられるか」といったポイントを改めて社内で確認しましょう。

目的が明確になったら、次に具体的な数値目標を決めます。漠然とした目標ではなく、「いつまでに、いくらの売上をあげたいのか」、「どれくらいコスト削減を行いたいのか」といった具体的な数値目標定めます。

アクションプランの作成

売上や収益について目標が定まったら、目標達成時期を定め、海外進出のプロセスについてスケジュールとアクションプランを作成します。全体の事業計画が定まった後でも構いませんが、スピード感のある海外進出を実現するためにも、細かくアクションプランを作成・見直し、着実に行動に起こすことが重要です。

社内で担当者が複数いる場合には、それぞれの工程について担当者と期日を定め、チームとして効率的に海外進出事業へ取り組める体制を作っていきます。

ジェトロのウェブサイトより計画表のサンプルをダウンロードできるので参考にしつつ、自社の事業に合わせて計画を作成しましょう。

JETRO「計画表サンプル」:
https://www.jetro.go.jp/ext_images/theme/fdi/basic/plan/sample_rev.xls

進出国の検討

事前に調査した進出先候補について、国のマクロ環境と業界の成長性、そして自社目標の3つのポイントから各国を比較検討し、進出有望国を検討します。

マクロ環境については、法規制の観点からして自社事業の進出が可能か、外資規制はあるか、政治・経済は安定しているか、人件費・労働者の質はどうか、といった点を調査します。ジェトロのウェブサイトでも、国・地域別情報や投資コストの比較が可能です。

・国・地域別情報:https://www.jetro.go.jp/world.html
・投資コスト比較:https://www.jetro.go.jp/world/search/cost.html
・貿易・投資相談Q&A:https://www.jetro.go.jp/world/qa.html

業界の市場規模や成長性については、国によって業界構造が日本と異なり、自社の戦略や競合との競争に影響します。業界全体および調達・販売ルートを含めて各国の業界情報を細かく調査し、サプライチェーン上の自社の位置づけを明らかにして、最も自社の強みが活きる国はどこかを検討します。

進出形態の検討

目標を達成するためには、海外市場への進出形態についてもメリットとデメリットの両方から検討します。

現地に拠点を持たない方法として、輸出や越境ECを利用した販売、また生産委託などによる業務提携、技術やノウハウを供与する技術提携などが考えられます。輸出の場合には出張やオンラインベースでの営業活動になり、初期費用が抑えられる反面現地でのネットワークを築きにくい点がデメリットです。また業務提携や技術供与などは、資金負担を抑えた海外展開が可能になる一方で、技術流出や品質管理、ロイヤリティの回収、カントリーリスクといった様々なリスクもあります。

現地に拠点を持つ方法としては、現地法人、支店、駐在員事務所の3つの方法が挙げられます。

現地法人のメリットは進出先国での国内法人として単体で営業活動や調達業務など業務全般を現地法人の責任で独立して行うことができる点です。国や分野によって外資の出資比率に制限がある場合があるので注意が必要です。

支店は日本本社と同一法人のため、日本本社が支店の法律行為について全て責任を負います。決算は日本本社と支店とを合わせて行われます。支店の形であれば営業活動が可能ですが、国によっては設置そのものが認められていない場合もあります。

駐在員事務書は現地で営業活動を行うことができません。日本本社の一部として、連絡業務や商法収集業務、市場調査、販売代理店の支援などを行います。

リスクやトラブルへの対策方法

海外進出の大きな課題のうちの一つとして、海外ならではのリスクやトラブルが挙げられます。戦争・動乱・災害・政策変更などによるカントリーリスクのほか、政策や規制の変更による見通しのつきにくい採算性の問題、パートナーとのトラブルや労務問題など、日本国内とは異なる予想外のリスクが発生する可能性があります。

こういった海外進出にあたって知っておくべきリスクを事前に調査し、ここまでのリスクは負うがこれ以上はストップすると言うようにリスク負担の基準をあらかじめ決めておきましょう。また撤退の手続きについても事前に調べておくと、今後思いがけないトラブルが起こった場合でも客観的な意思決定ができます。

人材や資金確保の方法

事業計画を立て、必要な人材や資金が分かってきたら、人材確保の具体的な方法や資金調達方法について検討します。

人材確保については、自社内で担当を決めるのか、あるいは外部から経験者を採用するのか、海外拠点の人材は現地の日系人材紹介会社を利用するのか、など必要な人材とその人材に合った確保の仕方を具体的な計画に落とし込みます。海外拠点の場合、国によって現地人材の採用割合が定められている場合があるため、そういった現地の雇用に関する規制も調べる必要があります。

また資金調達方法についても、金融機関より融資を受ける、国の機関の補助金・助成金を活用するなど様々な方法が考えられます。国として企業の海外進出を促進しており目的によって様々な補助金・助成金があるため、国や地方自治体の海外進出支援に関する取り組みについて情報収集することも大切です。

海外進出の事業計画書作成後

最後に、事業計画書を作成した後やるべきことについて説明します。

現地調査

事業計画の作成過程で把握した情報や市場状況を、実際に現地にて目で見て確認します。現地に赴くことで、国内で行なった調査との整合性を確認するとともに、現地の事情や競合の動きなど直に確認することができます。

また海外展示会へ参加して自社の製品やサービスの需要を知る方法もあります。実際に出展すると現地拠点を設立せずともテスト販売を行うことができ、また展示会に訪問するだけでも競合他社の製品情報や価格について調査を行うことができます。提携先候補に渡航前に連絡を取り、現地訪問時に面談するのも良いでしょう。

戦略の修正・確認と最終的な意思決定

事業計画書の内容を現地調査で把握した現状に合わせて修正・検討しなおし、仮説戦略の再確認と再構築を行います。計画と現地調査の結果とが異なった点や修正するべき点を洗い出し、どの国にどの製品で海外進出をするのか意思決定を行います。

最終的な意思決定を進めるのと同時に、金融機関や政府機関をあたって資金調達も進めていく必要があります。実際の現地調査で分かったより具体的な必要資金や販売計画を見直し、説得力のある事業計画を基に資金調達を進めます。

まとめ

事業計画の作成は、漠然とした海外進出のアイデアを可視化することで、より具体的な施策について検討し、社内外に説得力を持って伝えることのできる大変有効な手段です。海外進出の検討段階では、事業計画を作成することでより今後のやるべきことや検討すべき事項が明確になります。

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