海外向け商品のパターンとローカライゼーション(現地化)戦略について解説

海外進出を検討するときに、自社の商品をどのような形で販売すればいいのかというのは悩ましい問題です。今回は、海外進出する際のポイントとしてよく耳にする「ローカライゼーション(現地化)」戦略とそのメリット、具体的な方法を解説します。

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海外進出における商品の3パターンとメリット・デメリット

海外に商品を展開する方法として考えられる商品のパターンは、自社の既成商品を直接輸出する、現地向けに変更を加える、現地のニーズに合った商品を作る、の3つです。

すでにある自社商品を直接輸出する

すでにある自社製品を直接輸出する方法としては、例えば現地の販売代理店や小売店に自社の商品を卸して、現地語で現地の規制に沿った表示シールを上から貼る方法です。特に食品や化粧品などは国によって成分表示について細かい規制があるため、そういった規制を満たす方法で表示を変更します。

商品を直接輸出するメリットは、海外向けに特別な設備投資や製造ラインの変更が不要で、販売代理店や小売店などに対して自社商品を販売する方法を開拓できれば海外市場への参入ができる点です。商品の変更がないため、販売を決めてからすぐに現地の販売網の開拓に移ることができる点もメリットといえます。

また現状通りの商品を製造するため、製造について海外でマネジメントをする必要はなく、安定した質の商品を販売することができます。

デメリットとしては、パッケージが日本語表記のみの場合、現地の人に内容や使い方について理解してもらうのが難しい点と、商品によっては輸出に際して関税がかかる可能性がある点です。また食品の場合、イスラム圏などは現地の宗教でブタ由来の成分やアルコール成分といった特定の成分が宗教的に禁じられており、そのような地域の消費者に宗教で禁じられている成分の入った商品を購入してもらうのは難しいこともあります。

現地向けの商品として変更を加える

自社製品を現地向けに変更を加える方法として、現地のニーズや文化に合わせて既成の商品の製造過程や成分、パッケージに少し変更を加える方法が考えられます。

商品に現地向けの変更を加えるメリットとしては、自社商品のブランドイメージを崩さないまま、現地文化に馴染む商品を開発できる点です。パッケージを現地語にすれば、中身や使い方についても理解してもらうことができ、また宗教で禁じられているような成分を避けて現地で受け入れられやすい商品を作ることができます。

商品に現地向けの変更を加えることのデメリットは、場合によってはそれ専用の製造ラインや製造方法の変更が必要になる点です。大幅に変更する場合はより大きな設備投資費がかかってくるため、海外進出にあわせてまとまった資金が必要になります。

また、現地で製造ラインを設立する場合や現地の工場へ製造委託する場合には、製品の質や数についてマネジメントする必要があり、自社より製造経験や海外経験のある人材を派遣する必要があります。

現地のニーズに合った商品を作る

現地のニーズに合った商品を作る方法として、自社の海外進出に合わせてゼロから新事業を立ち上げる形があります。自社のリソースや蓄積されたノウハウを利用しつつも、現地で需要が高まると予測される商品を開発し、製造から販売まで行います。

現地のニーズに合った商品を作るメリットは、現地の需要に沿った商品をピンポイントで開発し、現地に合った方法で販売できることです。既成の製品を使わなければならないといった縛りがないため、自社の技術やノウハウを生かせる商品を、より現地に適した方法で提供することができます。

現地のニーズに合った商品を作るデメリットは、一からの事業立ち上げになるので大きな資金と労力が必要になる点です。商品についての事前調査や計画の策定、製造方法の検討や製造業者の選定、販売先の開拓、マーケティングなど、自由度が高い分やるべきことも多く、また企画から販売までに長い時間がかかってしまうことが考えられます。

海外で商品を販売する際のローカライゼーション(現地化)戦略

続いてローカライゼーション戦略について、メリットと目的、課題を解説します。

ローカライゼーション戦略とは

ローカライゼーション戦略とは、海外進出する際に商品やマーケティング方法を現地の文化や地域性に対応させて行うことです。商品作りにおいては現地向けの言語やパッケージデザイン、成分表記などを現地の文化や規制に合わせたものにし、また現地の経営においては、現地の人々を雇用し、現地の商習慣に倣ってビジネスを運営していきます。モノだけでなく、日本国内で培われたノウハウや技術を現地に提供するようなサービスについても、同様にローカライズされることがあります。

ローカライゼーションが必要な理由

世界には多種多様な国があり、それぞれ独自の文化を持ち、異なる言語を使用しています。
そのため、ローカライゼーションは日本国内でどんなに売れている商品であったとしても、海外進出には必須の要素だと言えます。

ローカライゼーションは商品に対してだけでなく、経営やマーケティング方法にも適用することができ、既存の商品を販売する場合でも、現地の顧客が理解できるように商品の特性やメリットを説明する必要があります。ただ商品説明を現地語に翻訳するだけでは十分ではなく、現地の顧客の目線に立って自社商品について考えていく必要があります。

ローカライゼーションのメリット

ローカライゼーションを強化するメリットは、大きく4つ挙げられます。

まず第1に、海外市場に参入する際の文化の違いによるトラブルやブランドイメージに悪影響を与えるリスクが軽減されます。ローカライゼーションによって現地の顧客目線で商品の見せ方やマーケティング方法を検討することで、現地の人による商品に対する感じ方が悪い場合にはそれを改善し、翻訳ミスなどの初歩的なミスも回避することができます。

第2に、他国の競合による商品がマーケットに参入している場合、自社商品がローカライズに力を入れているほど現地の顧客にとっては親しみやすく、信頼されやすくなります。特に現地の外資系企業の商品が輸入されたものだけを取り扱っている場合には、商品の見せ方やマーケティングを工夫することでより顧客に響きやすくなります。

第3に、現地の顧客目線でローカライズを実践することで、顧客満足度を高めることができます。顧客が商品を認知してから購入に至るまで、そして購入後のサポートといった顧客が体験する全てのプロセスについてローカライズされた満足度の高い方法で提供することができれば、顧客がリピーターとなって再購入したり、口コミで現地コミュニティーに広がったりして売上がさらに伸びることが期待されます。

第4に、ブランドへの信頼の向上が挙げられます。顧客目線のコミュニケーションを行い、ニーズを汲み取りながら商品をアップデートして顧客の期待に応え続けることで、顧客は自社の商品に対して信頼を深めていくことが期待できます。一度サポーターになってくれた顧客は、今後も自社の商品を購入し続けてくれる可能性が高いです。

第5に、収益の増加が期待されます。ローカライズを意識した商品の見せ方とマーケティング方法を実践することで、現地の人の間での認知が増え、購入してもらえる確率も増えることが期待できます。また現地語で積極的に情報発信をすることで、現地での認知と共有が拡散し、より多くの顧客に購入してもらえる可能性が高くなるでしょう。

ローカライゼーションの課題

ローカライゼーションを行う際の課題として、2つあげられます。

1つは、自身の日本人的な視点から一度離れて、現地の顧客の立場で物事を考える必要があることです。日本人であれば誰でも、長年生活した日本の文化や考え方が身についています。しかしその考え方や感じ方、価値観は日本人として見た視点であって、現地の人がどう感じるかは現地の人に聞いてみなければわかりません。「きっとこう考えるだろう」「きっとこう感じるだろう」という推測だけで進めたり、日本で売れているのだから絶対うまくいくだろうという考えで現地の人からの意見を聞かないで進めたりすると、ローカライズされた商品とはかけ離れたものになってしまう可能性があります。一度自分の思考を0にして先入観を無くし、現地の方の意見を沢山聞きましょう。

もう1つは、国によっては商習慣が日本とは全く異なる点です。日本では公式な内容はメールで送付することが一般的だったり、面談の際は時間より少し前に到着するのがあたりまえとされていたりします。しかし海外ではメールを送付しても全く返事がなくメッセージアプリを利用して商談が進められる場合や、面談に30分以上遅れてくるのが普通に受け入れられている場合など、日本的な商習慣とは全く異なった方法でビジネスが行われています。

現地で取引先や現地の従業員に日本式に合わせてもらうことを期待しても、うまく行かない可能性が高いでしょう。日本は日本、現地は現地のやり方と区別をつけて、相手にとって仕事のしやすい存在として受け入れられるようにすることもローカライズの重要なポイントです。

ローカライゼーション(現地化)の方法

次に、経営、商品、マーケティングの3つの観点から、具体的なローカライゼーション方法について説明します。

経営のローカライゼーション

経営のローカライゼーションとは、日本式の経営や商習慣ではなく、現地の経営方法や社員とのコミュニケーションの取り方を意識したマネジメントの方法です。日系企業だからといって日本の商習慣を現地の人に合わせてもらおうと考えてもうまくいきません。現地の文化やイベントに合わせてビジネスを調節し、現地の顧客や社員にとって気持ちの良いコミュニケーションの取り方を心がける必要があります。

日本では宗教的な習慣や家族の事情と仕事は別という考え方が広く持たれていますが、海外では仕事中であっても祈祷の時間になればお祈りをする地域や、家族の予定が急に入った場合には柔軟に対応するのが一般的なこともあります。仕事終わりの飲み会が普通とされない国も多いです。現地の人の働き方を注視して経営に取り組む必要があります。

商品のローカライゼーション

車や家電製品といったグローバルに標準化されている商品であれば、ローカライゼーションに力を入れなくても機能や効率性を訴求するだけで売ることができるかもしれませんが、現地に馴染みのない商品を売ろうとする場合には商品そのもののローカライゼーションが必要になります。

例えば大手飲食店チェーンは、国や地域によってその土地の食材や文化習慣を考えたメニューを取り入れています。日本では和風メニューや旬の食べ物を取り込んだメニューを展開している時に、他の国では宗教的イベントや国や地域の文化イベントに合わせたメニューを提供し、現地顧客にローカライズした方法で市場を開拓しています。

マーケティングのローカライゼーション

海外進出をする場合には、その国や地域のターゲット顧客にしっかりリーチするようなマーケティング施策を実施する必要があります。自社ブランドの視覚的要素、デザイン要素、メッセージ要素について、現地の方に正しく認識してもらえるように、現地のターゲット層にヒアリングすることが重要です。

特に商品名やブランド名は、日本で育てたブランド名をそのまま使いたくなりますが、場合によっては現地では悪い印象を与える意味である場合もあるので注意が必要です。悪い印象を与えてしまうネーミングの場合にはブランドそのものを傷つけてしまう可能性もあります。日本人としての先入観を一度捨てて、現地の視点からみてどうなのかをよく検討しましょう。

まとめ

海外進出の際には、自社商品をそのまま現地で販売するのではなく、現地の顧客にとって信頼されるような商品の見せ方やマーケティング方法を考えていくことが重要です。

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