海外マーケティングの手法・戦略解説|支援企業の活用も視野に

マーケティングとは「顧客が望む価値を生み出す戦略、仕組み、プロセス」と言えます。

海外マーケティング戦略は、海外進出を成功させる上で非常に重要です。担当者が戦略の立て方を知れば、グローバル市場でのビジネスを成功させ、事業規模を拡大できます。海外マーケティングのポイントを解説します。

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「マーケティング」の意味

マーケティングとは、「顧客が欲しいと思う価値を創出する戦略、仕組み、そしてそのプロセスである」といえます。アメリカのマーケティング協会の定義(2007年)によると「マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである」とされています。

顧客への一方的な押し付けではなく、顧客の欲求を理解し、顧客が求める価値を創造し顧客に届けるまでの仕組み作りであると言えます。今ある商品を売り込むという視点ではなく、顧客を中心に考えることが重要なポイントです。顧客を理解するために、多種多様なリサーチや分析を行います。

海外マーケティングで使える手法

BtoCマーケティング

BtoCマーケティングでは、一般消費者である個人をターゲットとします、価格は一定で、来店・通販・小売経由での販売になります。海外で直接店舗を持って販売する、現地企業に自社ブランドのライセンスを付与する、越境EC(日本からオンラインで販売する)、現地の小売業者へ商品を卸す、といった販売方法が考えられます。プロモーション方法としては、現地のインフルエンサーを使ったSNSマーケティングや、現地のターゲット顧客へ向けたWebサイトでの情報発信、インターネット広告を利用するなどメディアを活用した方法を取る場合が多くなります。

BtoCマーケティングの特徴として、購入者個人での意思決定となるため、購入決定までが早く、また取引金額はBtoBと比較して少額になる傾向があります。

BtoBマーケティング

BtoBマーケティングでは、企業をターゲットとします。価格は顧客の希望要件に合わせて見積もりを行うケースが多くなります。また、販売は顧客への訪問など直接販売またはパートナー企業を通じた販売になります。海外でも、見込み顧客の獲得には展示会、電話やメール、セミナーの開催、Webサイトでの情報発信などが利用され、実際に顧客を訪問して会ったり、Web上であればオンラインでの提案を通じて販売します。
マスに向けた広告よりも、展示会で業界のバイヤーにアピールをしたり、電話やメールなどを通して個別で見込み企業へ1対1で提案を行なったりしてプロモーションを行います。近年ではBtoBでもWebサイトでの情報発信を通じて新規顧客の獲得に繋げる、ターゲットに向けたインターネット広告を利用するといったデジタルマーケティングの手法を取ることもあります。

BtoBマーケティングの特徴として、企業内での組織的な意思決定が必要であるため購入までに時間がかかり、取引金額は高額になる傾向があります。

海外マーケティング戦略の立て方

マーケティング戦略とは、「誰に」「どんな価値を」「どのように提供するか」を決めることです。顧客の調査・分析に加えて、自社が現在置かれている内部・外部環境についても情報を収集し、分析します。その後、自社の強みを用いて課題を解決でき、競合に比べ明確な優位性を持つことのできるターゲット(誰に)を定めます。そして、そのターゲットに対し、自社が提供できる価値を定め、その価値をどのように届けるのか(具体的な製品、価格、流通経路、販売促進方法)を決めます。

新しい価値や新しい市場を作ることで、事業を作り出していく点で、自社リソースの効率的な活用での売上向上を目指す「営業戦略」とは異なります。

1. 様々な分析フレームワークを活用

有名な孫氏の言葉「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」にも示されている通り、相手の実力や現状を把握し、そして自分の実力についてもしっかり知ることで、負けない戦いをすることができます。そのためにまずは、顧客、市場、競合、そして自社について理解を深めます。

分析にあたっては、はじめに各分析について目的と仮説を設定します。目的と仮説を設定すると、情報収集がしやすく、深い分析が可能になります。例えば顧客についてであれば、「誰の何を知るのか」を決めます。BtoCであれば、ターゲットと想定している顧客の年代や性別、バックグラウンドを絞り、彼らの生活習慣を知りたい、彼らが直面する環境の変化を知りたいなど、目的を設定します。「健康志向になってきている」など仮説を立てると、関連するデータが集めやすくなります。

情報を集める方法は、収集するデータのタイプによって定量調査と定性調査に分けることができます。定性調査では、事実や統計といった数値データを収集します。各国政府の調査機関により実施された調査結果や、レポート、また調査会社を利用し電話調査やWebサーベイなどでも知ることができます。定性調査では、人の感情や意見、思考といった行動を起こす根本的な理由を解明します。購入者の認識やニーズの深さをインタビューなどで知ることができます。

分析手法としては、
・3C分析(顧客-Customer、競合-Competitor、自社-Companyを分析する)
・SWOT分析(強み-Strength、弱み-Weakness、機会-Opportunities、脅威-Threatsを分析する)
・PEST分析(政治-Politics、経済-Economy、社会-Society、技術-Technologyのマクロ環境を分析する)
といった様々なフレームワークを活用することができます。

特に海外進出にあたっては、最初に進出先の市場と動向を把握するなど基本的な調査を行い、進出前にSWOT分析などで自社の競争力について十分分析しておく必要があります。現地での競合他社と対抗できる独自の差別化戦略が必要になります。

2. ターゲット顧客を決める

次に、「誰に」の部分であるターゲットとする顧客を決めます。そのためには、市場の細分化(セグメンテーション)を行い、市場構造を把握します。セグメンテーションとは、は市場または顧客について、類似するニーズや性質をもとに細分化・分類を行い、小さな顧客グループ(セグメント)を作ることです。

現代では、顧客ニーズと行動の多様化が進み、全ての人を対象とするようなマスマーケティングが合わなくなってきています。そのため、自社の製品・サービスが最も満足させることのでき、競合に優位性を持つことのできるセグメントの顧客グループを選択する必要があります。

細分化(セグメンテーション)の軸として使われるものには、地理的変数(国、地方、地域の人口密度、天候傾向など)、人口動態変数(年齢、性別、家族のライフサイクル、世帯規模、所得、職業など)、心理的変数(社会階層、ライフスタイル、パーソナリティー、購買動機など)、行動変数(製品に対する知識、態度、使用場面など)が挙げられます。

しかしこういった細分化は無限にできるため、効率的に行うために「セグメンテーションの4R」を指針にターゲット候補となる顧客グループを絞ります。4Rとは「優先順位-Rank」「規模の有効性-Realistic」「到達可能性-Reach」「測定可能性-Response」です。

  • 優先順位-Rank(自社の経営戦略から見た重要度によりランク付けする)
  • 規模の有効性-Realistic(そのセグメントが十分な規模を持っているか、収益可能性を持っているかを検討する)
  • 到達可能性-Reach(そのセグメントの顧客に製品/サービスを届けることができるか、難易度を検討する)
  • 測定可能性-Response(そのセグメントの規模、購買力、特性が測定可能か、製品/サービスが届いた後反応を測定できるか、を検討する)
  • セグメンテーションを行い、顧客グループを絞った後は、その中でも特に強い課題感を感じられ、自社の強みを生かして最高の成果を提供でき、競合に比べ明確な優位性を持てる顧客グループを見極めて「ターゲット顧客」を決定します。

3. 顧客に提供する価値を決める

ターゲット顧客が決まったら、彼らに提供する価値を決めます。様々な製品・サービスが溢れる現代で、顧客が自社の製品・サービスを選ぶ理由が必要です。自社の製品は顧客のどのような課題を解決するか、顧客にとってのメリットは何か、競合の製品との違いは何かを言語化します。

自社製品の価値、メリット、独自性を顧客に伝え、その価値を高めることを「バリュー・プロポジション」と言います。バリュー・プロポジションは、マーケティングだけでなく自社の企業活動の上での指針となります。バリュー・プロポジションの検討時には、マーケティングの神様と言われるマイケル・ポーター氏が提唱する3種類の戦略「コスト・リーダーシップ戦略(業界の最安値を狙う)」「差別化戦略(ユニークな価値、高い付加価値の提供を目指す)」「集中戦略(業種・顧客・用途を絞って特定の層に資源を集中させる)」が参考になります。この中の1つの戦略を方向性として選択するのが良いと言われており、複数の戦略を取ると経営資源の分散と非効率的な経営に繋がります。自社のバリュー・プロポジションは経営資源を分散させるものになっていないかを、常に問いかける必要があります。

4. 価値の提供方法を検討する

「誰に」「どんな価値を」提供するか定まったら、次にその価値を顧客に届ける方法を検討します。顧客へ価値を提供する具体的な方法を考えるのには、1960年代より、4Pと呼ばれる「製品-Product」「価格-Price」「流通-Place」「販促-Promotion」のフレームワークが利用されてきましたが、1990年代には4C理論「顧客価値-Customer Value」「顧客にとってのコスト-Cost」「顧客利便性-Convenience」「顧客とのコミュニケーション-Communication」が提唱されました。

  • 顧客価値(Customer Value)は、上記で述べた「提供する価値」に相当します。
  • 顧客にとってのコスト(Cost)は、商品の価格(Price)に加え、顧客が製品を導入するにあたり発生する時間、手間、心理的負担を指します。
  • 顧客利便性(Convenience)は、顧客が、商品を手にするまでの手軽さ・利便性を指し、顧客が商品を購入する場所(Place)だけでなく、Webサイトの使いやすさや決済・受け取り手段まで、顧客の視点に立って利便性の高い経路を考えます。
  • 顧客とのコミュニケーション(Communication)は、企業のプロモーション活動にあたり、インターネット広告やイベントといった販促方法(Promotion)に加え、顧客にどのようにメッセージを伝え、何を感じてもらい、顧客とどのような関係性を築いていくのかを定めます。
  • 4Cで「どのように提供するか」を定めたら、マーケティング戦略のベースである「誰に」「どんな価値を」「どのように提供するか」が完成します。

5. 戦略にあった施策を選択・実行する

「誰に」「どんな価値を」「どのように提供するか」が定ったら、具体的なスケジュールと行動計画を策定し、実行に移していきます。1~4のステップを通じて定めたマーケティング戦略を実現できる最適な施策を選択し、その実行に必要なステップとやることリストを書き出します。社内のリソースやパートナー企業と相談しながら実行可能なスケジュールを組み立て、価値を顧客に届ける仕組みを作っていきましょう。

海外マーケティングの成功ポイント

現地に関する事前調査を行う

海外進出のためのマーケティングを成功させるには、事前調査が重要です。これが流行っていると聞いたから、や、こういう習慣があると聞いてなんとなく受けると思ったから、という感覚的なものだけでなく、実際のデータや現地の競合の状況、自社が選ばれる理由、といった根拠をもとに仕組み作りを行なっていく必要があります。海外であればなおさら、日本人の生活様式や感覚とは異なるため、現地の情報を事前に調査しておくことは重要です。ニーズがあるであろうと思われたのに全く必要としていなかったり、あるいは日本での用途とは別の用途で必要とされる可能性もあるのです。

マーケティング戦略を立案する

マーケティング戦略として「誰に」「どんな価値を」「どのように提供するか」を定めることは、日本国内であっても海外であっても重要です。特に海外で事業を行うにあたっては、思いがけないトラブルや困難に直面することもあり、その際に明確に言語化されたバリュー・プロポジションが社内で共有されていれば経営資源の利用方法や立て直しの方向性もスムーズに決定し実行することができます。

提供する商品を絞る

日本国内で販売している製品・サービスを全て海外にアピールしていくのではなく、調査やマーケティング戦略を踏まえて、当該国で必要とされる価値と競合優位性のある製品であると判断した商品のみに絞って、顧客へのメリットや今までの実績を示すのが良いでしょう。また即座に反応がない場合や、急に引き合いがある場合もあるため、いつでも応じられるような在庫確保と社内体制を整えておく必要があります。

ニーズ・市場の変化を把握する

特に海外進出にあたっては、最初に進出先の市場と動向を把握するなど基本的な調査を行い、進出前にSWOT分析などで自社の競争力について十分分析しておく必要があります。進出時には現地での競合他社と対抗できる独自の差別化戦略が必要になります。

また自社製品に競合優位性がないと、海外での取引先からの受注を維持することは困難です。現地のニーズ、市場の変化についての情報収集を積極的に行い、他社よりも早く把握して製品開発に取り組むなど、競争力を維持する必要があります。常に現地の市場価格や取引先の動向の把握、自社製品のポジションを客観的に把握しておくことが大切です。

言語・文化の違いを理解する

海外でのマーケティングにおいて、言語と文化背景を理解することは重要です。文化背景が違えば人々のライフスタイルや生活習慣は異なるものとなります。地域や文化によって生活において重要なものが異なり、課題も異なってきます。そういった現地の情報を入手するには、ターゲット地域の言語に詳しいパートナーが必要ですし、現地に足を運び生活に密着することで文化理解に努める姿勢が大切です。

また、BtoC、BtoBともにWeb上での販売やプロモーションの広告運用を行う機会が増えていますが、SEO対策において現地のターゲット顧客が課題に対して検索するキーワードはネイティブの感覚で知る必要があり、その場合現地語に詳しいマーケターとともにWebマーケティングの戦略を練り、実行していく方が望ましいでしょう。

現地パートナー・代理店との連携

現地パートナーや代理店を通じて販売を行う場合には、特にその代理店の信用情報とマーケティング能力を調べる必要があります。販売をパートナーや代理店に任せると、自社が入手できる顧客の反応やニーズに関する情報が少なく、また自社のマーケティング戦略に沿ったプロモーションや販売活動を行っているか見えにくくなります。そのため、現地パートナーや代理店には販売レポートを提出してもらう、商品の改良・開発に繋がる情報収集、市場分析をおこなうといったコミュニケーションを密に取っていく姿勢が重要です。代理店契約の場合、価格決定は自社で行い、独占的な契約は避けるほうが望ましいでしょう。

強固な社内体制を確立する

海外展開には全社を上げての取り組みが必要です。必要な時に必要な人材と経営資源を投入できるような社内体制を構築し、事前に実行可能な計画を立てて着実に取り組むことが大切です。社内で少数の担当者だけに丸投げしていたり、社外のコンサルタントなどに全てを任せていては、せっかく引き合いが来ても国内事業で手一杯で対応ができずにチャンスを逃してしまったり、国内事業にも悪影響が及んでしまう可能性もあります。

海外マーケティングをBeeCruiseが支援

日本国内で販売してきた質の高い製品・サービスが海外でも受け入れられると考える企業は多く、実際には現地でそれほどの品質のものが必要とされていなかったり、競合他社がすでに何社もあったりするなど、調査してみなければわからない事実は多く、事前調査とマーケティング戦略無しでの海外展開は困難であると言えます。日本で売れている製品を海外に出すという意識ではなく、自社の経営資源を使って「誰に」「どんな価値を」「どのように提供するのか」を念入りな事前調査と根拠を持って定め、計画的に取り組んでいくことが大切です。

BeeCruiseでは、海外進出を支援する事業を行っております。海外への製品・サービス展開をご検討される際にはぜひBeeCruiseにお問い合わせください。

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