ECサイトの構築を検討する上で、必要な費用の工面は大きな課題の一つではないでしょうか。補助金は、その課題を解決するための有力な手段の一つとなります。
この記事では、ECサイト構築で活用できる補助金の内容や申請方法について説明します。ECサイト構築の費用の工面で悩んでいる企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
BeeCruiseのメルマガでは、越境ECや海外販売のノウハウを定期的にお届けいたします。
(メルマガ登録をする)
ECサイト構築で活用できる補助金とは?
まずは、ECサイト構築に必要な費用や補助金の基本的な情報について解説します。
ECサイト構築に必要な費用
ECサイトを構築する際の費用は、サイトの規模や機能、デザインによって大きく異なります。一般的には、小規模サイトの場合、100万円以下、中規模サイトの場合は100~500万円程度が見込まれます。ただし、実際の制作相場は、制作するECサイトの種類や導入する機能によって変動します。
ECサイトの制作費用には、サイトのデザインや機能の実装、システムの開発などが含まれます。規模が拡大するにつれて、数百万円に達することもあります。そのため、ECサイトを構築する際には、希望するサイトの規模や機能を考慮し、制作にかかる費用感を事前に理解しておくことが重要です。
補助金を活用するメリット
補助金をネットショップで活用するメリットは、開業および運営のコストを削減できる点にあります。ネットショップは実店舗の賃貸料が発生しないため、その分の支出が抑えられます。ただし、開業時には機器購入やネットショップの制作、広告費、営業許可などの初期投資がかかり、競争激化による集客の難しさも考えられます。
補助金はこのような課題に対処するため、返済不要の資金提供があります。これにより、銀行融資と比較して少ない売上からの返済負担が軽減され、経営に集中できます。助成金と比べても補助金の方が種類が多く、ネットショップに適用しやすい傾向があります。補助金は経済活性化や事業支援を目的としており、その柔軟性がネットショップ経営に適しています。したがって、補助金を活用することで、事業の立ち上げや拡大における財政的なハードルを軽減できるでしょう。
ECサイト構築で利用できる4つの補助金
ECサイトを構築する際に利用できる補助金としては、主に以下の5つが挙げられます。
- IT導入補助金
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- ものづくり補助金
ここからは、これらの補助金の概要や具体的な申請方法について解説します。
利用できる補助金まとめ
補助金には、対象とする事業や補助金の上限額、支給日などの条件がそれぞれ異なります。まずは、ECサイト構築で利用できる補助金の基本情報について表でまとめます。
補助金の種類 | IT導入補助金 | 事業再構築補助金 | 小規模事業者持続化補助金 | ものづくり補助金 |
公式サイト | it-hojo.jp | jigyou-saikouchiku.go.jp | r3.jizokukahojokin.info | portal.monodukuri-hojo.jp |
対象 | 中小企業・小規模事業者 | 中小企業・中堅企業 | 小規模事業者(法人・個人事業主・特定非営利法人) | 中小企業・小規模事業者(個人事業主・特定非営利法人・社会福祉法人) |
補助金額 | 最大350万円 | 最大7,000万円 | 最大50万円 | 最大1,250万円 |
新規構築かリニューアルか | 新規構築のみ | 事業再構築の類型に準ずる | 新規構築・リニューアル | 特記なし |
申請先 | IT導入補助金事務局 | 事業再生構築補助金事務局 | 小規模事業者持続化補助金事務局 | ものづくり補助金事務局 |
補助金支給日 | 事業実績報告後半年以内 | 事業実績報告後12ヶ月以内 | 事業実績報告後数週間程度 | 事業実績報告後1ヶ月程度 |
補助率 | 最大3/4 | 最大1/3 | 最大2/3(ウェブサイト関連費は補助金総額の1/4) | 最大1/2(小規模事業者などは2/3) |
続けて、これらの補助金について細かな情報を解説していきます。
IT導入補助金
概要
「IT導入補助金」は、経済産業省が実施する補助金事業であり、具体的には「サービス等生産性向上IT導入支援事業」に属します。この補助金は、ITツールなどを導入する際の経費の一部を助成する目的で提供されています。主な対象は中小企業や小規模事業者などです。
IT導入補助金には、3つの異なる枠が存在しています。「通常枠」「セキュリティ対策推進枠」「デジタル化基盤導入枠」がそれで、ECサイト構築に関連する申請が可能なのは「デジタル化基盤導入枠」です。
この枠では、会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトの経費の一部や、PC、タブレット、レジ、券売機などの購入費用の一部が補助対象となります。また、インボイス制度を活用して企業間の取引をデジタル化する事業もサポート対象とされています。IT導入補助金を活用することで、企業は効率的なITツールの導入を支援され、業務の生産性向上を図ることが期待されます。
ただし、2024年からは「インボイス枠」が設けられており、補助率を一部「4/5」へ拡大する計画があります。ただし、インボイス制度に対応していない企業のECサイト構築は対象外となるため、これから申請を準備しようとしている企業は注意しましょう。
参考:公式サイト
対象となる事業
IT導入補助金の「デジタル化基盤導入枠」の対象事業者は、日本国内で法人登記している法人または個人で、交付申請時点で日本国内で事業を営むことが条件です。具体的な対象者は以下の通りです。
- 中小企業:資本金や従業員数などの条件あり
- 小規模事業者:商業・サービス業では従業員(常勤)5人以下、宿泊業・娯楽業では従業員(常勤)20人以下、製造業その他では従業員(常勤)20人以下
また、ECサイト構築に関しては、「デジタル化基盤導入枠」の条件として以下が挙げられます。
- IT導入支援事業者に相談し、ITツールを選択すること。
- ECサイトを新規で構築する場合は、ASPカートを利用すること。
- モール型ECサイトに出店する場合は、サイト制作を伴う新規出店をすること。
なお、ECサイト構築を他の事業者に依頼したり、自社で構築したりする場合、またECサイトのリニューアル目的で導入する場合は補助対象外です。ただし、2023年10月1日より施行されるインボイス制度に対応するための取り組みは、スクラッチ開発でのECサイト構築においても「デジタル化基盤導入枠」において補助対象になります。
参考:IT補助金2022
補助金額
IT導入補助金の「デジタル化基盤導入枠」におけるECサイト構築の補助金額は最大350万円です。この補助金は、会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトなどの導入にかかる経費をサポートするもので、補助対象経費区分にはソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費が含まれます。
補助対象ソフトウェアは、会計・受発注・決済・ECの中から1機能以上、または2機能以上を含むものが対象となります。補助率は3/4以内または2/3以内で、補助額は50万円以下から350万円まで範囲があります。
例えば、AmazonなどのECサイトの月額利用料や構築費用が最大2年分まで補助対象であり、ハードウェア購入費についてもPCやタブレットなどが補助率1/2以内で最大10万円、レジや券売機などは補助率1/2以内で最大20万円までが対象となります。このように、補助金の種類や対象経費には詳細な条件が存在し、事業者はそれに基づいて補助金を活用することができます。
申請方法
IT導入補助金の申請には、法人および個人事業主といった事業者ごとに異なる書類が必要です。法人の場合は、「法人税の納税証明書」や「履歴事項全部証明書」が必要です。個人事業主には「所得税の納税証明書」や「確定申告書の控え」、「運転免許証または運転経歴証明書、住民票」が必要です。
申請要件は19項目あり、その一部として、IT導入支援事業者との相談、インボイス制度への対応状況報告、交付決定後の立入調査協力などが挙げられます。詳細は公式サイトよりご確認ください。
また、申請前にはgBizIDプライムアカウントの取得や関連プログラムへの宣言、経営チェックの実施が必要です。また、補助金の交付が確定した後にITツールの発注・契約・支払いなどが行われるべきで、予めこれらの手続きを完了させる必要があります。
申請スケジュールにはIT導入支援事業者の登録申請、ITツールの登録申請、交付申請期間などがあり、それぞれの締切日や決定日が定められています。これには「デジタル化基盤導入枠」の1次締切分、2次締切分、3次締切分などが含まれ、事業者はこれらの期限を守りつつ申請手続きを進める必要があります。詳細なスケジュールについては公式サイトよりご確認ください。
事業再構築補助金
概要
「事業再構築補助金」は、新型コロナウイルス感染症の影響で売上回復が見込めない中小企業を支援するための補助金です。この補助金は、変化の波に乗って新しい事業展開に挑戦する企業をサポートします。
「成長枠」は、大胆な事業再構築に取り組む企業が対象となる部門で、補助金の事業類型の1つです。成長分野への挑戦を促進し、企業の成長を支えることを目的としています。この「成長枠」においては、企業が積極的に未来の展望に基づいて事業を再構築し、成果を上げることを期待しています。様々なニーズや市場の変動に適応する柔軟性を持つ企業に対して、具体的な支援が提供されます。
参考:公式サイト
補助金額
事業再構築補助金の「成長枠」では、最大7,000万円の補助金が支給されます。この補助金は、企業が様々な経費に活用できます。具体的には、建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費などが対象となります。
補助率は企業の規模により異なり、中小企業者等は補助率1/2、中堅企業等は補助率1/3となります。大規模な賃上げを行う場合、それぞれの補助率が変動します。
また、従業員数に応じて以下の補助額が定められています。
- 20人以下:100万〜2,000万円
- 21〜50人:100万〜4,000万円
- 51〜100人:100万〜5,000万円
- 101人以上:100万円〜7,000万円
申請方法
事業再構築補助金を申請するには、さまざまな書類と要件が必要です。一般的な事業類型としては、事業計画書や確認書、決算書、ミラサポplusの事業財務情報、労働者名簿などが必要です。法人や個人事業主によって必要な書類が異なり、成長枠の場合は、市場拡大要件の説明書や賃金引上げ計画の誓約書などが必要になります。
また、申請要件には補助事業終了後の事業計画や市場規模の拡大、給与支給総額の増加などが挙げられます。これらの要件を満たすためには、十分な説明と計画が求められます。
申請手順は説明会への参加、電子申請、補助金交付候補者の採択通知から始まり、その後の交付申請、交付決定、補助事業の実施と実績報告、確定検査、補助金の請求・支払い、事業化状況報告・知的財産権等報告までが含まれます。申請前には説明会への参加が必要で、電子申請にはgBizIDプライムのアカウント取得も必要です。
最新の申請スケジュールは公式サイトで確認し、第10回公募の場合は2023年3月30日に公募が開始され、申請受付は調整中で、応募締切は2023年6月30日(金)18:00です。補助金交付候補者の採択発表は2023年8月下旬〜9月上旬頃(予定)となっています。その他、詳細なスケジュールは公式サイトにてご確認ください。
小規模事業者持続化補助金
概要
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が経営計画を見直し、新たな取り組みを行うための補助金です。この補助金には「通常枠」の他に、「賃金引上げ枠」「卒業枠」「後継者支援枠」「創業枠」の特別枠が存在し、それぞれに独自の申請条件が設けられています。
今回は「通常枠」に焦点を当て、小規模事業者が商工会や商工会議所の支援を得ながら、経営計画に基づいて販路開拓などに積極的に取り組む機会を提供しています。この補助金を通じて、事業者は持続的な経営を追求し、成長戦略を展開できるよう支援されます。
参考:公式サイト
対象となる事業
小規模事業者持続化補助金の対象者は、いくつかの条件を満たす必要があります。
まず、対象者となるのは小規模事業者で、これには法人や商工業者の個人事業主、特定非営利活動法人(一定の条件を満たすもの)が含まれます。従業員が商業・サービス業では5人以下、サービス業の宿泊業や娯楽業では20人以下、製造業その他では20人以下である必要があります。
また、法人の場合は資本金または出資金が5億円以上でかつ100%の株式が直接または間接に保有されていないことが条件です。過去3年分の課税所得の年平均額は15億円を超えてはいけません。なお、補助金の種類によっても条件が異なり、過去の補助事業実施や卒業枠の有無なども考慮されます。これらの条件を満たす事業者が対象となります。
補助金額
小規模事業者持続化補助金の「通常枠」では、最大50万円の補助金が支給されます。
補助対象経費には、機械装置等費、ウェブサイト関連費、広報費、展示会等の出展費(オンラインの展示会・商談会も含む)、旅費、開発費、雑役務費、資料購入費、借料、委託・外注費、設備処分費、が含まれます。補助率は2/3で、ただしウェブサイト関連費については補助金総額の1/4となります。補助額の上限は50万円で、特例のインボイス特例要件を満たす場合にはこの上限に50万円が加算されます。
なお、ECサイト構築においては、「ウェブサイト関連費」に該当し、新規構築やリニューアルのための経費が補助対象です。ただし、ウェブサイト関連費だけでの申請は不可で、補助金総額の1/4が上限となります。
申請方法
申請から補助金交付までの手順は次の通りです。
まず、申請手続きを電子申請または郵送で行います。商工会・商工会議所地区ごとに異なる申請先が存在し、この段階で「gBizIDプライム」アカウントの取得が必要です。
次に、採択・交付決定が行われ、補助事業の実施が開始されます。実施後には実績報告書の提出が求められ、その後確定検査が行われて補助金額が確定します。補助金の請求・入金手続きが行われ、最終的に事業効果報告が行われます。
申請スケジュールは公式サイトのガイドブックに記載されており、いつでも最新情報を参照できます。例えば第12回の場合、申請受付締切日が2023年6月1日で、事業実施期間は交付決定日から2024年4月30日までです。実績報告書の提出期限は2024年5月10日です。同様に、第13回も同様に申請受付日や実績報告書提出期限が定められています。これから申請を検討される際は、最新のスケジュールは第14回の公式サイトを確認してください。
ものづくり補助金
概要
「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」は、働き方改革などの現代の変化に即した新たな経営開発を促進するための補助金です。
この補助金には、「通常枠」をはじめ、「回復型賃上げ・雇用拡大枠」、「デジタル枠」、「グリーン枠」、「グローバル市場開拓枠」など、多岐にわたる枠が存在します。それぞれの枠は、異なるニーズや経営課題に焦点を当て、事業者が必要な支援を受けられるように設計されています。これにより、事業者は変革の一環として補助金を活用し、生産性向上や事業の持続的な発展を図ることが期待されます。
参考:公式サイト
補助金額
ものづくり補助金の「通常枠」は、経営発展のための補助金で、最大1,250万円が支給されます。
この補助金は、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、知的財産権等関連経費に対して支給され、補助率は1/2。ただし、小規模企業者・小規模事業者・再生事業者に関しては2/3が適用されます。
補助額は従業員数に応じて以下のように決められています。
- 5人以下:100万円〜750万円
- 6〜20人:100万円〜1,000万円
- 21人以上:100万円〜1,250万円
なお、ECサイト構築に関しては、「クラウドサービス利用費」が補助対象であり、また、「グローバル市場開拓枠」の「海外市場開拓(JAPANブランド)類型」では、「広告宣伝・販売促進費」も補助されます。これにより、事業者は補助金を活用し、国内外での市場開拓やブランド拡充を支援されることとなります。
申請方法
補助金の申請手続きは、まず電子申請を行います。この際、必要なのは「gBizIDプライム」アカウントの取得です。電子申請による対応のみで、手続きの簡便性が向上しています。
採択が確定すると、交付通知があり、その後、交付申請へ進みます。交付が決定されると、補助事業を実施し、実績報告書を提出します。その後、確定検査が行われ、交付額が確定します。これらの手続きを経て、補助金の請求・支払いが行われ、事業の進捗状況や知的財産権等の報告も求められます。
なお、これから申請を検討される際は、公式サイトより最新のスケジュールを確認できます。例えば、第16次締切では2024年1月19日まで申請の受付が行われていました。
参考:ものづくり補助金総合サイト スケジュール https://portal.monodukuri-hojo.jp/schedule.html
まとめ
ECサイト構築で活用できる補助金にはさまざまなものがありますが、それぞれ要件やスケジュール、補助金額や用途が異なります。自社の状況に応じて申請可能なものを選択しましょう。また、申請に必要な書類やスケジュールについては最新情報をよく確認し、効率よく準備できるように計画しましょう。
越境ECの始め方について、ご興味がある方はぜひ以下の資料をご参考にしてください。